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これからのIT人材に求められるもの | 第4回

なぜIT技術者もマネジメント力を伸ばす必要があるの? どうしたら伸ばせるの?


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マネジメント力「も」伸ばす

技術者として技術力を伸ばしていくのはもちろんですが、筆者はマネジメント力を伸ばしていくこともお薦めしています。理由の1つは、長い目で見たキャリアアップのためですが、それだけではありません。

ビジネスの基本は「お客様にとって価値のあるものを提供し、対価をいただく」ということです。そのために技術は必須ですが、次のような力も求められています。

  • お客様が何を求めているのかを知る力
  • 約束(契約・合意)した内容を約束した通りに実現できる力
  • 期待以上のものを提供し、お客様に感動[3]してもらえる力

これを実現するためには、マネジメント力が必須です。特に、自分ひとりではできない規模の仕事で成果を出す(お客様の大きな期待に応える)には、チームやプロジェクトのメンバーの力を束ねて発揮できなければなりません。その結果を効率的に最大の効果を出すために、マネジメントは非常に有効です。

メンタル的に強くなるためにもマネジメント力は有用

マネジメント力を伸ばすべきなのは、仕事に役立つからだけではありません。自らの内面も強化してくれます。強化といっても、「パワーがある」強さではなく、「しなやかな」強さを得ることができます。

  • 自分で考え、自分で判断し、責任を持つ
  • 全体を俯瞰し、将来を見据えて考える
  • 目的志向で、目的のために何をすべきかを周りの状況を見ながら柔軟に考える

マネジメントにはこのような要素も必要です。逆にいえば、マネジメントを習得することで、このような強さが自然と身に付いてきます。

例えば、「タイムマネジメント」「体調のマネジメント」などは自分に対するマネジメントです。「ワークライフ・バランス」もその1つで、管理する対象は生活や人生です。つまり、マネジメントは仕事のためだけでなく、人生を豊かにするための考え方の1つといえます。

どうやってマネジメント力を伸ばすのか

さて、マネジメントとは「更なる上を目指し、より良い結果を出し続けることができるようにありとあらゆることを実施すること」と説明しました。しかし、「ありとあらゆることって、結局何をすればいいの?!」と聞きたくなるかもしれません。

残念ながら、そこに唯一無二の答えはありません。目標(何を目指すか)、内的要因(マネジャーの性格、資質、特性など)、外的要因(組織の種類、規模、メンバーの性格、資質、特性、経済状況など)、によって「より良い結果を出し続ける」ための方法は千差万別です。だからこそマネジメントは難しいですし、マネジャーは大変……だけれどもやりがいもあり、結果を出せれば高く評価されるのです。

ただし、マネジメント力を身に付けるための方法はあります。以下に紹介しましょう。

その1. メンターを探す

みなさんの周りには、マネジメントを実践している先輩がいらっしゃるはずです。尊敬できるマネジャーにつき、その一挙手一投足を見て、時に教えを請いながら体験を通して学習してみましょう。非常に濃い学習となるはずです。

その2. マネジメント関連の体系だった知識を学習する

経験からの学習はどうしても、体系的、網羅的な学習はできません。経験だけに頼ると、未経験の事象に直面したときに応用が効かない、全体を理解するのに時間や期間(場合によっては10年単位)がかかるというデメリットがあります。

これを補足するのは、体系だった知識ベースの学習です。前述のドラッカーの著書をはじめ、マネジメントに関する多くの研究や知見が、今も世界中で発表されています。また、対象業務や分野ごとに参考文献がありますし、マネジメントの知識や能力を有することを証明するための試験や資格も実施されています。例えば、IT業界で有名なものを挙げると、

  • プロジェクトマネジャーやプログラムマネジャーであれば「PMBOK[4]」「PRINCE2[5]
  • サービスマネジャーであれば「ITIL」

などがあります。

その3. 反面教師から学ぶ

これは奥の手なのですが、意外と使える技です。前述のとおり、マネジメントに唯一無二の答えはありません。だから、完全に正解のマネジャーも存在しえません。言い換えると、周りにいるマネジャーには何かしら欠点や不足があるはずです。その人たちへの文句や批判に時間を割くのではなく、「自分が同じ立場にあったら、どのように考え、判断し、振る舞うだろうか。」と常にシミュレーションする癖をつけるのです。

そして、可能であれば、自分ができる範囲で周りを巻き込みながら実践してみましょう。もし、そのシミュレーションが有効なものであれば、肩書などなくても、世界を動かし、望む結果につなげていくことができるはずです。

「栴檀は双葉より芳し[6]」のたとえのごとく、こういう思考や行動ができる人は先天的(?)にセンスが良く、自然と周りの信頼を得て、実力もつけ、結果を出していく人材となっていきます。しかし、マネジメントについては、あること(経験や学習)をきっかけに(後天的に)急に目覚める人もいます。むしろ、実際にはこちらのケースのほうが多いでしょう。マネジメント力は学習によって身に付けられる能力です。

これからのキャリアの選択にかかわらず、IT技術者にとっても、マネジメントを勉強することは技術の勉強と同じく必須だということをおわかりいただけたでしょうか。人生を実りあるものにするためにも、ぜひマネジメントというものを意識してみてください。

[3]: この「感動」が依頼のリピートにつながります。

[4]: PMBOK(Project Management Body of Knowledge)はプロジェクトマネジメントに関する知識を体系的にまとめたもの。プロジェクトマネジメント協会(PMI)が策定している。認定資格(PMP)もある。

[5]: PRINCE2(Projects in Controlled Environments, 2nd Version)は、英国商務局が作成したプロジェクトマネジメント手法。認定資格もある。

[6]: 物事を成し遂げる人は、幼いころからその才気を漂わせているということわざ。

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この記事の著者

最上 千佳子(モガミ チカコ)

日本クイント株式会社 代表取締役社長。システムエンジニアとしてオープン系システムの提案、設計、構築、運用、利用者教育、社内教育など幅広く経験。顧客へのソリューション提供の中でITサービスマネジメントに目覚め、2008年ITサービスマネジメントやソーシングガバナンスなどの教育とコンサルティングを提供す...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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