2020年4月は、働き方改革関連法が本格的に施行され、時間外労働規制の中小企業への拡大、ならびに大企業における同一労働同一賃金が適用されるタイミング。しかし今となっては、誰も想定しなかった要因によって、「働き方改革」がかつてないスピードで進展している。「テレワーク(リモートワーク、在宅勤務)」の導入拡大はその代表格であるが、さまざまな事情や懸念から「働き方」を変えられずにいる人も大勢いる。リクルートマネジメントソリューションズでは、同調査によって、テレワークの実態が少しでも明らかになり、社会における適用範囲が広がることにも期待したいと考えていると述べる。
また、テレワークは、オフィス以外の場所を選択できる働き方だが、実のところ、変化するのは働く場所だけではない。テレワーク環境においては、オフィスという空間が促したり補ったりしていたもの、例えば、意思疎通や人とのつながりの実感、自律やセルフマネジメントの実感、安定した日常と所属の実感などが抜け落ちることになる。同調査は、そのような「これまで当たり前のものとして確かにあったのに、失われてしまったもの」に光を当てることを通じて、「働き方改革」が個人や組織に促す心理的な改革への理解を深めることも目的としているという。
以下では、同調査の結果のポイントを示す。詳細は同社のWebサイトを参照してほしい。
- テレワーク経験者は全体で3割弱、販売系は1割を下回る
- テレワーク環境下では、管理職層の半数が「部下がさぼっていないか心配である」と感じている【図1】
- テレワーク未経験の管理職層の約67%は、「必要な時に業務指示を出したり、指導をしたりしづらい」「チームビルディングができない」ことを不安に感じている。一方で、経験があるマネジメント層でも約60%が同じく不安に感じていることから、これらの不安はテレワークを実際に経験することによって解消されないことが明らかに
- テレワーク経験がある管理職層が、未経験の管理職層に比べてより不安に感じているのが「部下の心身の健康の悪化の兆候を見逃してしまうこと」で、約7割が感じている
- テレワーク経験がある管理職層のほうが、テレワークを「部下が自己管理の習慣をつける」「部下が無駄な業務を減らす」「部下が生産性を高める」「部下がワーク・ライフ・バランスを改善する」「管理職がマネジメント能力を高める」機会と、前向きにとらえている【図2】
- 管理職・一般社員の双方において、テレワークを実際に経験した人の半数以上が、生産性や仕事へのやる気が向上すると考えている【図2】
- テレワーク経験者の半数以上が課題に感じていることは、「テレワークを利用できる人と利用できない人の分断」「ツールへの習熟度による足並みのばらつき」【図2】
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「労働時間」は減る人のほうが多いが増える人もおり、2極化
テレワーク環境下では、中断が減るなどして生産性が高まり、生活や健康に振り向ける意識や時間が増える一方で、さびしさや不安を感じることも増え、つながりが希薄化する傾向も。 - テレワーク環境下のコミュニケーションは、「雑談や思いつきレベルのアイディアの共有」「感謝の言葉をかけたり、かけられたりする機会」「同僚と、お互いの仕事の進捗を気にかけ、助けあう機会」が減ると感じる人が多い。
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テレワーク環境下でこそ必要なスキルは「文章で人に情報や要望を分かりやすく伝えること」が79.0%で最多
続いて【セルフマネジメントのスキル(「仕事の計画を自分で立て、進捗を管理すること(65.1%)」「上司や関係者への報告を適切に行うこと(62.6%)」)】。また、ぞれぞれのスキルが実際に身についていると考えている人は約半数。