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INSIDES――メンバー一人ひとりの心理状態と実践的なアドバイスをマネジャーに提供

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 従業員の心理やパフォーマンスが今どのような状態にあるのかを知るのは、マネジャーにとって重要なミッションだ。だが組織の中の誰が好調で、誰が思わしくないという「事実」を可視化するだけでは足りない。そこで見えた課題を各個人のレベルにまで掘り下げてアドバイスし、その人材のパフォーマンス向上や、時には離職の防止につなげる必要がある。社員の本音を見える化し、現場マネジャーとの対話を促進するクラウドサービス「INSIDES(インサイズ)」を提供する株式会社リクルートマネジメントソリューションズのHRアセスメントソリューション統括部 アセスメントサービス開発部 マネジャー 荒金泰史氏に、同サービスの詳しい機能やメリットを伺った。

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現場マネジャーがメンバーの考え・悩みを把握するためのツール

――まず「INSIDES」とは、どんなサービスなのか、特長や機能を教えてください。

 一言で言うと、企業の現場マネジャーにメンバー一人ひとりの心理状態を見える化し、それをもとに、どう関わっていくべきかのアドバイスをレポートするクラウドサービスです。

 診断の流れとしては、始めに対象のメンバーに、30問程度(3分程度)のアンケートに答えてもらいます。回答を提出していただいた翌日には、マネジャーにレポートが送信されます。

 レポートには、メンバーの仕事に臨む心理状態や仕事の進め方の分類結果が記されていて、各人が現在どんなことを考え、悩んでいるのかが分かります。マネジャーがその結果を見て、どのように対応すればよいのか悩んだら、そのレポート上のリンクから直接私たちの専門家に、オンラインで相談してアドバイスを受けられるようになっています。

 ちなみに、メンバーの心理状態というのは、具体的には「心理的安全性」と「エンゲージメント」の度合いを見ています。たとえば、「エンゲージメントが高いけれども心理的安全性が低い」というのは、仕事はちゃんとやるし、意欲もあるけれど、実はちょっと他に言えない悩みを抱えているといった状態です。見かけは何も問題がないようでも、本人は人知れず悶々としている、といった事実をこのレポートを通じて発見できるのです。

荒金 泰史氏
荒金 泰史(あらがね やすし)氏
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ HRアセスメントソリューション統括部 アセスメントサービス開発部 マネジャー
入社以来一貫してアセスメント領域に従事し、顧客の人事課題に対し、データ/ソフトの両面からソリューション提供・実証研究を実施。入社者の早期離職、メンタルヘルス予防、エンゲージメント向上、組織開発の領域に詳しい。現場マネジャーの対話力を向上させるHR Technologyサービス「INSIDES」の開発責任者を務める。

――レポートを見たマネジャーは、どのようなことを御社の専門家に相談するケースが多いのでしょう?

 やはり多いのは、そのメンバーに対して日頃思っていたこととレポートの結果が異なっている理由を詳しく知りたいというケースです。もう一つは、何となくネガティブな状態に気づいてはいたが、改めてレポートを見て、これは専門家に相談しなくてはと思ったというケースです。

 いずれにしても、マネジャー自身の考えに対して、私たち専門家から見るとこういう事態が考えられるといった、別の視点を示すことで新たな気づきを提供して、問題解決のフォローを行います。

現場の一人ひとりの思いをフォローすることが求められている時代

――現場のメンバーの心理状態を可視化するだけでなく、専門家によるアドバイスを通じて、課題解決にまで結び付けていくという点で、INSIDESは他に例がないサービスです。このサービスを立ち上げた背景を教えていただけますか。

 現代は、かつてのように個人が企業に従属するのではなく、逆に企業が個人を生かし、一人ひとりの生産性を最大化して、企業の競争力強化につなげていく時代です。そうした状況の変化を受けて、サーベイも従来とは異なる、より個人にフォーカスしたアプローチを考えなくてはならないというのが、このサービスを立ち上げた背景です。

 私自身、マネジャーとメンバーの思惑のズレから生じる残念なすれ違いを、非常に数多く目にしてきました。たとえば営業組織で、マネジャーが次の管理職やリーダー候補にと意気込んでいたメンバーがいたのに、本人はそれを重荷に感じて離職してしまったケース。あるいは、上司が部下の成長を思って課題の指摘やアドバイスを行ったのに、本人が課題と向き合える状態になく、すれ違いになってしまったケース。いずれも両者のコミュニケーションが適切に行われていれば防げたはずです。

――メンバーの成長を促す取り組みも大切ですが、それも相手が何を考え何を望んでいるのかをきちんと理解してこそ、ねらいどおりの効果を上げられるのですね。

 やはり、誰もが心の底ではやりがいを感じて働けたほうがいいと思っています。それが実現できれば自信もつくし、結果的にパフォーマンスも高まります。だからこそ、表面だけを見て「君はダメだからここを直せ」みたいな繰り返しではお互いに不幸です。そういったマネジャーとメンバーの齟齬を解消するためにも、状況を可視化するだけではなく、可視化された問題に対する具体的なアドバイスをマネジャーに提供したい。一人ひとりが、より前向きに仕事に取り組めるように支援するサービスを立ち上げたいという気持ちが強くありました。

――そういう意味では、いわゆる人事部門が使うツールと、現場のマネジャーが使うINSIDESは性格付けも違ってきますね。

 人事はマクロな視点で見るので、たとえばある部署で離職者が1人増えた、という変化に対しては、なかなか積極的に取り組みづらいです。もしこれを全社の離職者のパーセンテージで見た場合、むしろ減少していたら、この1人の問題は大きくは取り上げられないでしょう。しかし、現場はミクロで見ます。たとえば、そのメンバーの離職が原因でチームの業績が悪化したり、周囲のメンバーの業務的・心理的負担が増大していたりするのであれば、1人辞めるだけでも大変なインパクトです。マクロでは大きな問題にならない1人であっても、現場にとってはどれほど重要な問題か。INSIDESは、そこをサポートするツールでありたいと思っています。

戦略人事に有効な点がINSIDESの最大の強み

――コロナ禍でテレワークが急速に拡大して、マネジャーが一人ひとりのメンバーを見ることが難しくなっています。INSIDESのユーザーはどうですか。

 やはり「メンバーの日頃の様子が分からないので、どうやって関わったらいいのか?」という相談が急増しています。テレワークは仕事とプライベートの区別がつきにくいため、セルフマネジメントが非常に難しいのです。どう仕事と家庭の区切りをつけるかとか、集中できる環境をどう作るかとか。

 このためマネジャーも、オフィスにいるとき以上に、部下がどういう状態なのか把握することが必要になってきます。独りで誰にも悩みを相談できず仕事に集中できないとか、プライベートとの区切りがつかなくて焦っているといった問題を速やかに発見し、フォローする配慮が求められるのです。

――そうした場合も、専門家のアドバイスが利用できるINSIDESは、マネジャーにとっては頼もしい存在ですね。

 そこが、INSIDESが現場人事・部門人事の皆様から評価が高い理由の一つだと自負しています。現場で、市場での競争をどう戦うのかを日々追求している人たちには、「いま、こんな問題がある」と分かっただけではどうしようもない。その点、INSIDESならば、「その問題は、こうして解決していきましょう」というところまで提案できます。現場人事・部門人事の皆様は、現場の責任者やマネジャーとともに、「どうやってこの市場で戦うのか」を検討している立場です。それだけに、解決策まで提示されることの価値を、より強く実感していただけるのだと思います。

――現場の管理職としては、課題を教えてくれるだけでなく、実践的かつ具体的な情報やアドバイスが欲しいというわけですね。

 仕事と人の問題はバラバラではなくて、「この仕事で成果を挙げるには、このメンバーをどう生かすのか」という不可分の話なんです。しかし、多くの企業が人事ツールで評価・採点まではするけれど、そこで見つかった課題をどうするかまで踏み込めず、現場のマネジャーに任せっきりになってしまう。その結果、現場のマネジャーは業務と切り離された組織の課題だけを突き付けられて、1人で悩むことも珍しくありません。私たちは、そのマネジャーの助けになるサービスを提供していきたいと考えています。

問題を可視化したレポートをもとに具体的な解決策をアドバイス

――INSIDESのサービス内容を、もう少し詳しく伺います。サーベイの最初は、メンバーが約30問のアンケートに回答して、その結果をもとに被験者のワークメンタリティ(心理状態)を5段階に分類したレポート(パーソナルレポート)がマネジャーに提供されると聞きました。

パーソナルレポートの例
パーソナルレポートの例
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 5段階というのは「充実」「懸命」「淡々」「悶々」「窮々」で、最初の2つがポジティブ、真ん中の「淡々」がどちらでもない、そして後の2つがネガティブな状態です。ここで特徴的なのが、「どちらでもない」というメッセージを設けた点です。というのも、これがマネジャーとメンバーのすれ違いが起きやすい危険ゾーンだからです。

 「淡々」という表現のとおり、目の前の業務はちゃんとこなしているけど、実は周りに言えない、もしくは自分でも気づかない不満を抱えていて、このままフォローをしないと、じきにネガティブなほうに傾いていって、気が付いたときには離職や意欲喪失ということになりかねません。そこを「淡々と仕事しているけど、ポジティブな状態ではないんですよ」というメッセージで、マネジャーに気づきを与え、早めに手当してもらえる点は他のサービスではあまりないかなと思います。

個人のワークメンタリティを5段階に分類
個人のワークメンタリティを5段階に分類
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――このワークメンタリティの5段階を横軸にして、そこに「期待到達度」という縦軸を加えたマトリクス図(チームマップ)もありますね。

 横軸の5段階が「本人の実際の心理的状況」なのに対して、縦軸の「期待到達度」は、上司から見た評価です。この縦×横の座標から、何が起きていて何が必要かを読み取ることができます。たとえば期待到達度が高いのに横軸が「悶々」や「窮々」の場合、上司からは仕事ができている=前向きに見えているが、実は本人は悩みを抱えて意欲を失っており、放置すれば離職につながりかねません。

 また期待到達度が芳しくなくて「悶々」の場合、上司が「もっと仕事を頑張れ」と言っても、本人の心理状態に不満があるので素直に受け入れられない。マトリクス図(チームマップ)を見ることで、こうしたすれ違いや思い込みに上司自身が気づき、自分のマネジメントに反映していくことができるのです。

チームマップ。横軸の5段階が「本人の実際の心理的状況」、縦軸の「期待到達度」は上司から見た評価
チームマップ。横軸の5段階が「本人の実際の心理的状況」、縦軸の「期待到達度」は上司から見た評価
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――そうしてマネジャー自身で考えてもうまくいかない場合は、専門家のアドバイスにつなぐパスがちゃんと用意されているわけですね。

 そのアドバイスも、これまでの相談例をもとにした想定事例や、実践的な対話の進め方、押さえておくべき課題解決のポイントなどを豊富に提供しています。そのため、「相談したら問題点ばかり指摘されて、余計に分からなくなってしまった」といったことがなく、各人のケースに対応した具体的な解決のヒントが得られます。メンバーと接していく上で、自分だけでは見つけづらい、新たな視点や糸口を得られるのです。

 また、対応の早さも、INSIDESならではのアドバンテージです。ご相談いただいて基本的に2営業日以内、たいがいの場合、翌日には回答をお出しできます。相談される方はかなり心理的に追い詰められている場合もあるので、できるだけ早く回答をお返しするのも重要なサポートの一つだと考えています。

オンライン相談の例
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メンバーの状態が上向くとマネジャーのコンディションも良くなる

――今後、INSIDESをどのように展開していくのか。具体的な活用方法も含めて教えていただけますか。

 引き続き、ビジネスの現場の人たちが日々戦っていく指針を得るお手伝いをしていきたいと考えています。マネジャーがメンバーの状態や心理を正確に把握して、課題に対応する際に的確なアドバイスを提供することは、これからも変わらない、INSIDESのテーマです。そのために多様なデータの集合体をどう生かしていくかは、まだまだ発展途上であり大きな課題だと思っています。

 また、これからトライしたい課題としては、もっともっとマネジャーの学びを深めたいですね。具体的には、たとえばマネジャーがメンバーの状況を分析して、今のこの人の状態は、以前の誰かの状態に似ているのではないかとか、他の部署で似たような事例があったとか。マネジャーが過去の経験に学んで、この先の対応の引き出しを増やしていく仕組み作りです。

 そうした経験値の蓄積こそが「学習」であり、ピープルマネジメントにおける熟達とは、そういった学習を通じて、マネジャー自身の引き出しやパターンを増やしていくことだと考えています。技術的には、さまざまな情報を機械学習などを応用して掛け合わせ、定量的に指標を出せるようにするなど、今後の研究によって、もっと深くきめ細かく作り込んでいけると考えています。

――現場の一人ひとりのケアをより充実させていけば、組織のパフォーマンスをさらに上げていくことが可能になるわけですね。

 興味深いことに、メンバーの状態が改善していくにつれて、部長や課長といったマネジャー職のコンディションも良くなっていく例が非常に多いのです。INSIDESを活用してマネジャーとメンバー、またメンバー同士の関係が良くなってくると、マネジャーも楽になるし、部署や組織全体がとても良い状態になってくるものだなと実感しています。

 最近はマネジャーの仕事を「感情労働」と表現する人もいますが、メンタル状態が良くない部下に深く関わっていくのは、マネジャーにとって非常に大変な仕事です。そういう心理的な負荷を下げる意味でも、INSIDESはマネジャーを助け、マネジャーを変え、マネジャーのコミュニケーションを高め、最終的に企業の生産性を高めていけるツールだといえます。

――そうした特性が、メンバーの心のケアをビジネスのパフォーマンス向上に結び付け、働く人も組織も良い方向に向かわせるのですね。本日はどうもありがとうございました。

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