リファラル採用は長期的なHR戦略
リファラル採用に話題を移そう。社内外の信頼できる人脈やつながりを通じた採用となる。リファラル採用を実施する企業は着実に増えている。2015年にリファラル採用制度があり実施しているのはわずか10%だったが、2020年には63%にまで増えている。リファラル採用のメリットも顕著に出てきている。
例えば、社員1000人を抱えるある企業では、リファラル採用で採用コストを約6300万円削減し、離職率は3分の1に、エンゲージメントや生産性は倍増した。海外のGAFAを中心とした企業や日本の急成長企業ではリファラル採用が4~5割に上るほど浸透している。
一方で、リファラル採用の導入に失敗する場合もある。主な原因は3つ。「自社がリファラル採用を踏む意義が整理できない」「成功するイメージを合理的に説明できない」「インセンティブ設計でリーガルチェックが通らない」である。鈴木氏はこれらについて丁寧に解説を行った。
自社がリファラル採用を踏む意義が整理できない
改めて、リファラル採用後の影響について整理してみよう。採用コスト、離職率は下がり、決定率は上がり、人材紹介に比べれば選考プロセスは少なくなるものの、人事工数は多い。鈴木氏は「リファラル採用だと採用効率が極めて高いものの、仕組化するまでに工数がかかります。そのため短期ではなく長期の採用戦略と考えるべきでしょう。認知やカルチャー作りが大事です」と説明する。
イメージとしては、最初の1~2か月は人事側の負荷があるものの、リファラル採用が軌道に乗ってくれば人事の負荷は下がり決定数は着実に上がっていく。鈴木氏は「今始めたとしたら、4年後には採用費用や離職率で大きな差が生まれます」と長期的な視点で見る重要性を強調した。
成功するイメージを合理的に説明できない
リファラル採用に対して懐疑的な人事担当者だと「うちの社風にリファラルは向いていない」「リファラルよりもエンゲージメントを高めるほうが先だ」と懸念することもある。こうした懸念について鈴木氏は「リファラルが起きるシーンを想像してみてください」と呼びかける。リファラルが起きるシーンはヘッドハント型と相談型の2つ。前者は社員から積極的に友人・知人に声をかける形、後者はプライベートな場などで、キャリアの相談などを受けそのタイミングで自社を勧める形だ。それぞれに合わせて適切なアプローチをすれば成功につながるという。
繰り返しになるが、インターナルモビリティやリファラル採用といった仕組みとエンゲージメント向上は動き出すと相乗効果が生まれてくる。鈴木氏はポイントとして「組織を自分ごと化する」と挙げる。社員が当事者意識を持つと、会社を自分ごととして見られるようになり、ヒト・モノ・カネに関するミッションに関わるようになり、自分たちで仲間集めをするようになってくる。
エンゲージメント向上とリファラル採用のどちらが先かと考えるなら、鈴木氏はリファラル採用が先だという。リファラル採用の構成比が高い企業は、リファラル採用に着手してからエンゲージメント向上施策に取り組んでいる。
インセンティブ設計でリーガルチェックが通らない
リーガルチェックを懸念する場合、主に紹介のインセンティブが職安法40条に抵触すると考えているのではないだろうか。これは制度を適切に整備しておけば問題ないだろう。基本的に、リファラル採用のインセンティブを賃金(募集業務の対価)として支払うように就業規則などで制度化しているのであれば、職安法に抵触しない。また、鈴木氏は「制度として対価が高額にならない設計と、紹介者は募集行為のみを行い、紹介後のプロセスに関わらせない設計が必要です」と説明する。ここは制度設計をする時に専門家と相談して進めていけばよいだろう。
インセンティブをどう考えるか、どのくらいの金額が妥当かは悩むところだろう。リファラル採用制度を運営している企業の85%は報酬(インセンティブ)制度を設計している。半数弱が9万円以下だ。鈴木氏は「リファラルのほとんどは友人の力になりたいという相談型で発生しています。社員が自社の求人が転職を考える友人の力になれると知り、プライベートで気軽に紹介できる状況を作り出すことが大事です」と説明する。
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