アドバンテッジ リスク マネジメントは、適性検査「アドバンテッジ インサイト」を2020年3月~8月末に「新卒」区分で受検した全サンプルより500サンプルを無作為に抽出することによりその傾向を調査し、結果を発表した。
①「EQ能力」
「感情をうまく管理し、利用できる能力」であるEQ能力は、この5年間でほぼ横ばいとなった。ただし、EQ能力を形成する4つの能力(4ブランチ)を見ると、「その場・状況にふさわしい気持ちになる能力」を指す「感情の利用」が大きく上昇しており、ここ5年間で最高値となっている。「感情の利用」のスコアが高い人は、効果的な問題解決や創造性を発揮するために、どのような感情を作り出せばよいのかを知り、実際にその感情を作り出す能力を備えている傾向がある。
②「コンピテンシー」
「成果に結びつく行動特性」であるコンピテンシーは、19卒から上昇傾向にある。中でも21卒では、「ビジョン創出力」「困難克服力」「コミュニケーション力」が上昇している。最もスコアが上昇した「コミュニケーション力」は、他人の話に耳を傾け、自己表現が適切にできるという認識が強いことを指す。次にスコアが上昇した「困難克服力」は、「困難な物事に直面したとき、めげずに問題解決のための行動を取る力」を指し、スコアが高い人は強い精神力を持ち、失敗や挫折からの立ち直りが早い傾向がある。続いてスコアが上昇した「ビジョン創出力」は、「自律的に行動し、目的や目標を明確化する力」を指す。スコアが高い人は、主体性を発揮して自分の進むべき方向を明確にしたり、積極的に新しい知識を習得したり、新しいことへ挑戦する傾向がある。
③「潜在的なストレス耐性」
「ストレスを強める特性(リスクパターン)」「ストレス対処方法(コーピング)」「ストレス緩和力」の3要素で構成される潜在的なストレス耐性は、19卒から全体的に緩やかな上昇傾向にある。21卒では特に、「ストレス緩和力」のうち、「周囲からのサポート」と「自己効力感」が上昇している。特に上昇が見られた「周囲からのサポート」は、周囲の人からサポートを受けられていると感じていることを示す。また、「自己効力感」は、自分の能力や技量への自信を指す。スコアが高い人は、自分の行動や能力に自信を持っていることから、前向きな気持ちで物事に取り組む傾向がある。
以上のような結果から、アドバンテッジ リスク マネジメントは次のように考察している。
「学習指導要領が個人の能力や個性を重視する方針にシフトした、いわゆる『ゆとり教育』を受けた世代の『ストレス耐性』が懸念されていた数年前と比較し、21年度新卒採用において『感情の利用』や各種コンピテンシー、ストレスを緩和する力のスコア上昇が見られた要因は、対面コミュニケーションが極端に少ない学生生活や、過去の知見が通用しないコロナ禍での就職活動等で、必然的に気持ちの切り替えが必要となる場面が増えたこと、およびこの難局を乗り越えたという成功体験に起因すると考えられる。このことから、21年度新入社員は、過去5年間の傾向と比較すると、入社後のテレワーク環境下におけるストレスに対しても、この成功体験に基づいて順応しやすい傾向があると考えられる。
一方で、同社ストレスチェック結果から見た『コロナ禍における若手社員(25歳以下)』は、以前よりも、上司・同僚との関係が築きにくくなっており、やや高ストレス者が増加している傾向にある。これは、入社年次が浅いため、そもそも社内コミュニティの形成が不十分であったところに、コロナ禍によるコミュニケーション機会の減少が重なったことで、さらに社内コミュニティ形成の難しさが加速し、結果として若手社員が孤独感を感じやすい環境が生じたことが一因と考えられる。そのため、21年度新入社員の持つ『テレワーク下のストレスにもうまく対処できる可能性』を最大限に発揮させるためは、上司・同僚が積極的に関わる等、孤独感を感じさせないようなサポートが必要だと考えられる」