誰にでも仕事上のミスや過失は起こりえます。しかし、それが就業規則にある解雇や雇止めの事由にいつでも該当するわけではありません。社会通念上、明らかに問題のある行動だった場合などに限られます。今回ご紹介するのは、極めて軽微な事故を起こしたタクシー運転手が、タクシー会社から雇用契約の更新をしない旨を告げられ、訴訟に至ったケースです。判決は雇止めを無効としたのですが、その根拠になったのは労働契約法の2つの条項でした。
1. 事件の概要
本件は、会社(以下「被告」といいます)でタクシー運転手として勤務し、定年退職後は有期の嘱託雇用契約を結んで稼働していた社員(以下「原告」といいます)が、雇止めは無効と主張し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認などを求めたものです。
(1)当事者
原告は、昭和25年生まれの男性であり、被告でタクシー運転手として稼働していました。
被告は、主にタクシー運転手およびタクシー営業車の管理並びに運行を目的とする株式会社です。
(2)原告と被告との間の雇用契約の内容等
原告と被告は、昭和57年4月27日に、期間の定めのない雇用契約を締結し、原告は、平成29年4月18日に67歳で定年退職しました。
定年退職後、原告は被告との間で、雇用期間を平成29年4月19日から平成30年4月18日までの1年間とする嘱託雇用契約を締結しました。
平成30年4月頃、原告と被告との間の嘱託雇用契約は更新されました。
(3)自転車との接触事故
①接触および不申告
原告は、平成30年11月18日午後7時頃、あるホテルのロータリー内に左折して進入しようとした際に、左後方から進行してきた自転車と接触しました(以下「本件接触」といいます)。
原告の車両に衝突した自転車の運転手は、衝突後、すぐに走り去りました。このとき原告は、車両を止めて外部を確認することなく、ホテルのロータリーに入り、乗客を下車させました。
本件接触後、原告は、警察や営業所に連絡することなく、引き続き営業を続けました(以下「本件不申告」といいます)。
②実況見分
原告は、営業所に帰庫した際、営業車に自転車と接触した際にできた跡があることに気づき、A補佐に本件接触を報告しました。
A補佐は、原告に対し、直ちに自転車と接触した現場に戻り、警察に通報するよう指示し、原告は、その指示に従って警察へ事故の通報を行い、臨場した警察官とともに実況見分を実施しました。
③注意指導
A補佐は、原告が実況見分を終えて帰社後、原告に事故報告書を作成させ、事故の原因や警察および営業所への報告義務違反について指導しました。
原告は、平成30年11月20日、B課長から本社のC部長と面談を行うことになったと通知を受け、同月21日、本社にて、C部長、B課長などと面談しました。
原告は、本件接触および本件不申告について事情を聴取され、指導を受けました。
それを受け原告は、今後、注意して運転する旨述べました。
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坂本 直紀(サカモト ナオキ)
人事コンサルタント、特定社会保険労務士、中小企業診断士、坂本直紀社会保険労務士代表社員。就業規則作成・改訂、賃金制度構築、メンタルヘルス・ハラスメント対策社内研修などを実施し、会社および社員の活力と安心のサポートを理念として、コンサルティングを行う。
ホームページに多数の人事労務管理に関する情報、規定例、書式等を掲載中。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

