リンクアンドモチベーションのモチベーションエンジニアリング研究所は、「働き方の多様化、就職活動のオンライン化による新入社員意識の変化」に関する調査を行い、結果を公開した。
同調査では、2021年度の新入社員を対象に新入社員エンゲージメントサーベイを実施し、働き方の多様化、就職活動のオンライン化の中で新入社員が企業に対してどのようなことを期待し、満足しているのかの分析を行い、入社時における企業と新入社員のエンゲージメント向上におけるポイントを考察した。
新入社員エンゲージメントサーベイでは、独自の「組織への帰属要因となる4因子(目標・活動・人材・条件)」を16領域・全64項目に分類し、それぞれの項目について期待度・満足度の2つの観点で質問を行い、回答者はそれぞれの期待度・満足度を5段階で回答する。また、組織への帰属要因となる4因子の総合満足度を質問し、同様に5段階で回答する。回答結果は期待度・満足度の各項目のスコアおよび、期待度×満足度の2軸で整理された「4eyes Window」を使用して整理される。
新入社員エンゲージメントサーベイの結果を見ると、各領域が右肩上がりにプロットされていることから、新入社員の会社への期待と満足は概ね一致していることが分かった。また、新入社員の期待度と満足度がともに高い領域は、「貢献実感」「成長実感」 「開放的風土」など、開放的な風土の中で、貢献、成長を感じながら仕事をすることについてであった。
一方で、期待度は高いが満足度は低い領域は 「人材・共感性」 「経済報酬」「制度環境」「施設環境」など、共感できる人材の存在や条件面についてであった。この結果より、オンライン中心の就職活動に変化したことによる、社員との接点の希薄化が起きていると考えられる。期待度は低いが満足度は高い領域は、「企業認知」 「財務基盤」「企業理念」「経営戦略」「社会的意義」「人材・有能性」など、企業の安定性や理念、戦略、人材の有能性についてであった。
2021年度の新入社員が入社時に重要視するポイントは、適切な労働条件や待遇に加えて、やりがいが感じられ自己成長できる仕事ができるかどうかであった。また、快適な職場環境や多様な雇用形態といった項目の期待度が高いことから、コロナ禍におけるリモートワークへの対応が企業選びにおいて重要となっている可能性がある。
一方で入社時に比較的満足していることは、企業の認知度や安定性、仕事におけるやりがいや能力の獲得、自己成長であった。入社時に最も期待度と満足度の乖離が大きい項目は、給与や手当、労働時間、職場環境や、雇用形態といった制度待遇面であった。
同社が「組織への帰属要因となる4因子」と定める「目標」「活動」「人材」「条件」への総合満足度の平均値を算出したところ、総合満足度が最も高かったのは、「活動」「人材」であり、次点で「目標」、最も満足度が低いのが「条件」という結果となった。それぞれの因子別に見ると、
- 「目標」に対しては、「経営戦略」が特に強い影響を及ぼし、次点で「企業理念」が影響を及ぼすことがわかった。
- 「活動」に対しては、「貢献実感」が特に強い影響を及ぼし、「成長実感」「競争優位」も一定の影響力を持っていることがわかった。
- 「人材」に対しては、「開放的風土」が特に強い影響を及ぼし、「人材・有能性」も一定の影響力を持っていることがわかった。
- 「条件」に対しては、「経済報酬」が特に強い影響を及ぼし、「感情報酬」「施設環境」も一定の影響力を持っていることがわかった。
これらは新入社員の満足度が相対的に低い「条件」に焦点を当てると、「経済報酬」や「施設環境」の影響力が強いことは一般的な感覚とも一致する。一方で「感情報酬」も一定の影響力を持っており、企業の資源は有限であると考えると、より多くの「感情報酬」を提供できる組織作りも重要となってくると考えられる。