小泉 和美(こいずみ かずみ)氏
楽天グループ株式会社 広報部 社内広報課
ケーブルテレビ会社の営業職を経て、2000年楽天入社。対外広報を担当後、2005年から楽天の社内広報を担当。紙社内報、ウェブ社内報、動画社内報、携帯社内報などの立ち上げのほか、10年史・20年史制作も担当。多様な事業とダイバーシティ豊かなスタッフを抱える楽天グループが、共通の理念と戦略でスピーディに推進するための社内広報を目指して活動中。
三木谷社長の一声で始まった、毎日更新の動画インターナルメディア
――動画ニュースを毎日配信するという社内広報の形になった経緯を教えてください。
楽天では創業当時から、全従業員を集めて「朝会」を行っていました。そこで「社長が考えていること」や「各事業の業績」「成功ナレッジ」などを共有するための時間をとても大切にしてきました。
ところが、上場を境に事業や従業員の数が急激に増え、社長の考えていることなどの共有が難しくなっていきました。従業員が3000人を超えた頃、社長の三木谷(浩史氏)から「社内広報を立ち上げてほしい」と発案があり、紙の社内広報を立ち上げました。そして、従業員が5000人を超えてきた頃、紙では配布が難しく、情報をタイムリーに発信できないということから、社内広報はWeb上でデイリー配信へと移行していきました。
またその頃、通常の記事ニュースと並行して、月に1本程度、イベントの動画発信も行っていました。イベントなどで三木谷が行ったプレゼンの内容などを、簡単にまとめた動画ニュースです。それを見ていた三木谷があるとき、「これはもう動画のデイリーニュースに変えないか?」と発案したことで、2015年より動画ニュースを毎日配信するという現在の形である「Rakuten News Network(RNN)」となりました。
――RNNではどのような動画を配信しているのでしょうか。
大まかには、事業系とカルチャー系のニュースに分かれています。さらに細分化すると事業系は「ビジネス」「コーポレート」「スポーツ」「テクノロジー」というジャンルがあります。配信比率としては、事業系65%、カルチャー35%になります。
最近では、東京2020パラリンピックに私たちのグループ会社からパラアスリート2名が自転車競技に出場したので、その方たちを紹介しました。杉浦佳子さんは50歳という年齢で自転車競技で金メダルを2個獲得しましたし、藤井美穂さんも自己ベスト更新と素晴らしい成果を残しました。
最初の動画ニュースは、全社員が参加する「朝会」で行われた壮行会で放送しました。お二人がパラリンピックまでに積み重ねてきた苦しいトレーニングの様子や大会にかける想いを紹介した動画ニュースに、多くの社員が魅了され、放送直後から壮行会の間中途絶えることなく、オンラインチャット機能に社員から選手へエールのメッセージが届き続ける、という壮行会となりました。そのメッセージの数の多さや熱量の高さから、この動画を通じて多くの社員が選手の想いに共鳴し、また会社の仲間の一人として応援したいと思ってくれたことが伝わり、動画の力を改めて感じました。さらに、競技期間中は、競技場と連携して金メダルを獲った瞬間の選手コメントをいただいて速報を流すなど、せわしなく動いていました。
その他、「コロナ禍で私たちはいま何をしなくてはいけないのか?」「在宅勤務で心や身体の健康をどのように整えていくべきか?」など、コロナ禍で生じたさまざまな変化を取り上げる特集も出しています。
これら以外にも、他の事業部がどんな取り組みをしているのかを知りたいというニーズがあるので、社内の各事業部の取り組みについて取り上げることが多いです。
――動画の長さは1本あたりどれくらいでしょうか?
基本は5分程度です。ただ、通常ニュースとは別に「非常にコンパクトな情報ですぐにニュースを提供する」という速さと短さを重視した1分間動画の配信も行っています。
この2つの形式で長い間やってきましたが、コロナ禍になってからは在宅勤務のスタートもあり、新しくライブ配信の案内も始めました。内容は、記者会見や事業の戦略発表会などのライブ配信です。これが想定以上にニーズがあり、見逃した方向けに無編集のアーカイブ動画を置くようになったほどです。