組織活性化にチャットツールを積極活用
――組織活性化にもテクノロジーを積極活用されているそうですね。特にチャットツールの導入には力を入れられたとか。
尾日向 はい。ただ、営業所ではオフラインの会話が多く、拠点間の会話の必要性はそこまで高くなかったため、最初はとても苦戦しました。メールからチャットツール(Slack)へ移行する作業そのものも大変でしたし、チャットツールを通して組織をどう客観視すればよいか、非常に難しいテーマだったと感じています。
具体的には、チャットツールで誰がどのくらい発言やリアクションをしているか数値化したり、外部機関のアドバイスをもらったりしながら心理的安全性について観察してきました。施策を進めていく中で、コミュニケーション量云々よりも、「発言すること自体が認められるかどうか」という心理的安全性の有無が、大きなハードルだと気づきました。つまりは、チャットと対面、どちらのシーンにおいても、肩書きにとらわれず発言すべき場であれば、誰でも発言すべきという風土の醸成です。そこで、チャットツールにオープンチャンネルを作り、誰でも(肩書き問わず)発信してよいのだと後押しをして、自由な発言を促進する風土作りに取り組んでいきました。
――誰もが発信できる風土作りをするために、どのような仕掛けを行いましたか。
尾日向 弊社広報の加藤(絵理子氏)と私の雑談をきっかけに、スピード感を持って新サービスをリリースしたことがあるのですが、発案からリリースまでの一連の動きをリアルタイムにチャットツール上で見せました。
コロナ初期の頃、加藤から「コロナで在宅期間が長くなりエネルギー使用量が増えた顧客へ、割引などの形で還元できる施策はないか」という投げかけがありました。私はすぐにそのアイデアを承認し、オープンな発信のモデルケースとしてプロジェクトの進行を見てもらうため、連携が必要な各部署とのやり取りをオープンに行い、翌日にはそのサービスのプレスリリースを発表しました。
塩﨑 しかし、そのようなモデルケースがあっても、オープンに見られる場であるチャットツールでの積極的な発信はなかなか進みませんでした。対面ではよく話すタイプの人でも、チャットはどうしても別物ととらえてしまうようです。
そこで、発信することを一定ルール化したほうがよいのではと考え、新人日報に対するフィードバックの担当者を、指名制のリレー形式で行う取り組みをしてみました。
この取り組みはうまくいきました。隣の席の社員など、普段接していて顔の見えるメンバーにお願いされることで答えやすくなったようです。あまり乗り気に見えなかった社員も、案外熱いコメントを書いてくれるケースもありました。そのコメントに刺激を受けて、他の社員も徐々に中身の濃いコメントを書くようになり、組織活性化が進んでいきましたね。
――どのくらいで発言量が増加しましたか?
塩﨑 最初の2ヵ月は、説明に時間がかかり少し停滞気味でしたが、コロナ禍を経て急速に発言量は増加していきました。日報や社内報告を全てメールからチャットに移し、会議が物理的に集まれないときには代わりにチャットで報告するようルールを整えたことで、使用が加速していきました。尾日向が自ら動いていったことも奏功したと思います。