採用でアセスメントツールを導入
――ヒトとテクノロジーのちからの掛け算の例として、まず採用シーンからお聞かせください。
尾日向 従来はSPIを使用していましたが、SPIの結果を活かしきれていなかったため、新たにアセスメントツール(マルコポーロ[1])を導入しました。「どんな人材が欲しいのか」「どんな人材がマッチングしやすいのか」という客観的なデータで見て、採用活動を振り返っていったほうが意味があると考えたためです。候補者個別のSPIを見るのではなく、一歩手前の要件整理(採用の基盤作り)からやり直しをしたイメージですね。
採用アセスメントの導入の際は、各事業部長を集めて「どんな人材が良いか」など一からヒアリングを重ね、テストアセスメントを複数名に実施し、いくつかのグループを比較しながら検証を進めました。
――アセスメントツールを導入してどのような変化がありましたか。
尾日向 アセスメントツールを活用することで、データ起点の会話ができるようになりました。今まで肌感覚で行っていた人材に対する評価と、アセスメントからあぶり出された評価データには、何かしらの差が出てきます。それぞれが感覚や経験に頼って行った評価と、データ上の差分が出ること自体は問題ありませんが、この差が常に起きてしまうのであればチューニングが必要になります。自分たちの目で見た評価とデータが異なる際に、「客観的に見てこの人はどうなんだっけ」と、ディスカッションできるようになったのは良い変化です。
実際、私も含めて「良い人材」と評価したにもかかわらず、アセスメントでの評価が一致しないケースもありました。自分の目とスコアのどちらを信じるのかは難しいですが、これは「決め」の問題だと思います。
アセスメントを機能させるためには、「アセスメントツールを自社にとって意味のあるツールにする」という姿勢が重要です。つまり、データを100%信じて結果に従うのではなく、三ッ輪ホールディングスとしての目線をどう持つべきなのか決めていくことが大事なのです。
それに、私たちはまだアセスメントツールを導入したばかりで、データの蓄積が不十分です。そのため、面接官の見たものを信じるのか、スコアを基準とするのかについて答えがなく、出てきたものに対して、Aとするのか、Bと判断するかは私たちが決めていく必要があります。データドリブンといえども、データを蓄積をしながら「三ッ輪ホールディングスの判断基準」を作り続けていくしかありません。
――データ活用を実践されている中で、難しいと感じた局面はありますか。
尾日向 先ほどお話ししたとおり、データの蓄積やチューニングが一番難しいと感じていますが、それに加えて活用シーンとして、面接官の目線合わせも目下の課題ととらえています。例えば、営業パーソンの1次面接は各営業所で実施していますが、そこではどうしても面接官によってばらつきが出てしまう。そこのズレを合わせにいく作業は取り組んでいる最中です。
アセスメントツールを使い込んでいけば、この面接官がどういった傾向の人を評価し、採用するのかというデータも蓄積することが可能です。繰り返しになりますが、データ蓄積さえ続けていけば、候補者や既存社員、面接官を見極めたり、目線合わせする際に大いに役立つと思っています。多角的に使いこなすために、どんどん蓄積と活用を続けていきたいと考えています。
注
[1]: 現在はアセスメントツールとして「アッテル」を使用。