パーソル総合研究所は、経営・人事に資する提言を行うことを目的に、企業における戦略人事に関する調査結果を発表した。
調査の概要と結果は以下のとおり。
- 調査対象:日系企業の経営層・人事部管理職(従業員規模300名以上の企業)
- 調査方法:インターネット
- 調査期間:2021年10月21日~24日
- 有効回答数:947名
1.戦略人事の実現度
自社において「戦略人事」が実現できているかをたずねたところ、29.7%の人が「肯定」的な回答、41.6%の人は「否定」的な回答という結果となった(図表1)。また、企業規模が大きいほど、「肯定」的な回答の割合は多い傾向にある(図表2)。
Q.あなたの会社では「戦略人事」を実現することができていると思いますか?
2.戦略人事の主要要素の実現状況
「戦略人事の主要な要素」として上位に挙がった要素のうち、実現度の高いものは「経営戦略に紐づいた人事」(「人事部員が事業戦略を理解」「人事部のトップが経営会議に常時参加」など)や、経営層/事業部との「社内連携」であった。一方、実現度が低いものは「次世代人材の発掘/育成」や「事業部の人的資源の調整/配分」への深い関与、「人事ポリシーの明確な打ち出し」「従業員の前向きなキャリア形成のための施策実行」であった。また、「データドリブン人事」は、重要度・実現度ともに低くなっている。
3.戦略人事の実現度と人事部員の不足状況
戦略人事が実現できている企業の人事部では、「人事戦略・企画担当」や「人材開発・育成担当」「組織開発担当」といった人材の不足感が弱く、人材を確保できている傾向にある。一方で、戦略人事が実現できていない企業における「人事戦略・企画」や「人材開発・育成」担当者の不足感は強く、戦略人事実現の障壁になっているという。
4.HRBP/事業部人事の設置率
戦略人事の実現・推進に向けてその役割が注目されている「HRBP(HRビジネスパートナー)」と「事業部人事」の設置率を見たところ、HRBPの設置率は11.3%であり、事業部人事の設置率は27.5%であった(図表5)。企業規模が大きいほど、ともに設置率が高い。業種別にみると、「製造業、インフラ業」「情報通信業」においてHRBPの設置率が高い(図表6)。
5.HRBPの認知度
人事部管理職に対し、「HRBPについてどの程度知っているか」をたずねると、HRBPを「他者に説明できる」「知っている」と回答した割合は38.3%であった。
6.HRBP/事業部人事が担っている役割
自社におけるHRBPや事業部人事の役割を聞いたところ、「HRBP」を設置している企業であっても、20.0%の企業ではHRBPが管理的な業務のみを担っていた。一方で、組織名称が「事業部人事」であっても、65.1%の企業では事業部人事が組織・人事構想を担っており、組織名称と実態に乖離が見られた。
7.HRBP/事業部人事と戦略人事の実現度
戦略人事の実現度を低・中・高の3群に分け、それぞれHRBP/事業部人事の設置率や機能を見たところ、戦略人事実現度が高い企業ほど、HRBPの設置率が高く、またHRBP/事業部人事が組織・人事構想を担っている傾向が強かった。
8.人事データ活用状況と戦略人事の実現度
人事データの一元管理の実施度を低・中・高の3群に分け、それぞれ戦略人事の主要な要素の実現度を見たところ、人事データを一元管理できている企業ほど、戦略人事が実現できている傾向が見られた。その傾向は、特に「次世代人材の発掘・育成」「事業部の人的資源の調整・配分」「従業員への支援」「人事ポリシーの明確化」といった戦略人事の要素実現において顕著に見られる。
9.人事データ活用の実態
しかし、人事データ活用の実態を見ると、戦略人事の実現に必要な「従業員のキャリア志向」や「スキル・強み」といった人事データが一元管理され、活用されている企業は全体の4割に満たない。
【関連記事】
・人事管理職を育成する「戦略人事・強化プログラム」を開始、All Personalと共同で―Hitoiro
・凸版印刷が「カオナビ」を導入、社員1万2000名の人材データを活用し戦略人事を目指す―カオナビ
・CHROアカデミーCANTERAの新プログラム 「戦略人事講座・プラクティス」をスタート―All Personal