情報を仕入れる先・仕入れる情報の内容はこう変わった
──採用におけるメディアの利用状況はどのようになっていますか。
採用に限らず、これまで人々は世の中のことを、マスメディアからの発信を通して知ってきました。これが現在では、インターネットやSNSなどの登場により、個人をはじめ、マスメディア以外からの発信が非常に多くなりました。
この流れは採用においても当てはまります。2018年頃から、合同説明会やナビサイトから少しずつユーザーが離れているというニュースが流れるようになりました。大手媒体に偏って情報収集をするのではなく、SNSやWebメディアからも情報収集をする。この傾向がこの数年顕著になっています。
さらに採用領域でいうと、2020年からは新型コロナウイルスの影響で就職・転職活動がオンライン化され、求人媒体や合同説明会以外に、企業で実際に働いている人からの口コミといった情報を仕入れる動きが一気に加速しました。その点でもメディア構造に大きな変化が起きているといえます。
──ナビサイトもいわばインターネット上のメディアであるわけですが、それでも情報収集先としては利用が減ってきているのですね。
新卒採用においては、就活生が「就職活動の早期化と長期化」に対応するために、SNSやナビサイト以外のWebメディアを利用していくという話を聞きます。求人媒体、特にナビサイトですと、シーズンにより公開される情報が限られているからです。また、発信される情報も事業内容や制度・待遇といったものが多いのですが、就活生は、従業員の方はどういう雰囲気で働いているのか、どんな価値観・キャリア観で働いているのかといった情報を取りたいと思って、SNSや口コミサイト、社員インタビュー記事などを見に行くようになりました。そこで、シーズンによらずこれらの情報を得られる状態をつくっている企業が増えています。
中途採用においても、転職希望者が求める情報は増えています。企業の事業内容や就労条件だけでなく、そこで数年従事するとどんなスキルが得られて、自分の市場価値がどう上がっていくのか、どのようなキャリア観でどのような働き方をしたい人がいるのかといった、カルチャー面を含めた情報が求められています。こうした需要に応えるため、ナビサイト以外にも情報をきちんと置く動きが加速しています。
──BtoB企業など、日常生活で知る・触れる機会のない企業のことを偶然に知ってくれる巡り合わせを、SNSに期待できるものでしょうか。
可能性としてはすごくあると思います。人々が日常的に見ているSNS上で露出できれば、タッチポイントを作りやすいでしょう。最初にお伝えしたとおり、そもそもSNSを使う人が増えていますし、オンライン化によって情報を得る人が増えていますから。さらに、ナビサイト以外で発信される情報を人々が求めている話ともつながるのですが、SNSでは企業色や採用色を前面に出した発信よりも、今話題になっている事柄と仕事や働き方が結びついた情報など、SNSの文脈に即した情報に反応してもらえます。
例えば、社員を押し出していくときに、SNSユーザーの間で話題になっていること・注目されていることと結びつけられると、発信を読んでもらいやすくなり、「この企業にはこういう仕事があるんだ。こういう働き方ができるんだ」ということを伝えるチャンスが増えます。こうした形でSNS上で認知を高める可能性は広がっていると思います。