昨今のリスキリングの意味
DX(デジタルトランスフォーメーション)がうたわれるようになって久しい昨今、多くの企業が“デジタル人材”の確保に向けた取り組みを開始している。また、「リスキリング」という言葉が急速に日本でも浸透している。
リスキリングとは、そもそも「新しい職業に就くために、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する、または、させること」を意味する。しかし海外では、デジタル分野へのスキル転換とほぼ同義で使用されている。最近では特にデジタル化と同時に生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職業に就くためのスキル習得を指すことが増えている[1]。
ビジネスモデルや事業戦略が急速に変化する中で、人材戦略もそれに応じて変化させなければならない。DX時代の人材戦略は、リスキリングによって成り立つといっても過言ではない。
また、リスキリングは、単なる人事アジェンダにとどまらず、もはやグローバルでの経営アジェンダである。世界経済会議(ダボス会議)では、2018年から4年連続で「リスキル革命」と銘打ったセッションを実施しており、「2030年までに全世界で10億人をリスキリングする」と宣言している。
注
[1]: 【出典】リクルートワークス研究所 石原直子 人事研究センター長/主幹研究員「リスキリングとは」 2021年2月 経済産業省での講演資料PDFより抜粋・掲載
日本企業のリスキリングの動向
そのような状況下で、日本を代表するさまざまな企業が大規模な投資を行い、変革を進めている。日立製作所では、国内グループ企業の全社員約16万人を対象に、DX基礎教育の実施に着手している[2]。
商社においてもリスキリングが盛んである。住友商事では、AIを基礎から学ぶオンライン教育として3時間の研修を1000人に受講させている。三菱商事でも「IT・デジタル研修」を新設し、所属・年次・年齢を問わず、希望者が受講できるオンライン6講座を1000人が受講しており、2020年度内に13講座まで拡大している[3]。
その一方で、業種・業界やその企業の置かれた状況によって、取り組みが加速しない、または着手できないなどの困難に直面することが多いことも事実である。リカレント教育など、個人が自発的に行う自己啓発的な学習と混同・誤解されている面も多く、個々人の自律的な成長に任せっきりになっているケースも散見される。
そのような中で、効率的にDXを進めている企業は、やみくもに施策を実行するのではなく、自社が置かれた状況にかなった人材配置や育成・調達を実現している。うまく行っている会社とそうでない会社、一体どのような違いがあるのか、見ていくことにする。
注
[2]: 【出典】2020年9月11日 日本経済新聞、日経クロステック
[3]: 【出典】2020年10月19日 日本経済新聞