パーソル総合研究所は、企業人事の実態に関する調査を実施し、その結果を発表した。
同調査は、企業人事の実態を明らかにすべく経営層・人事部管理職層を対象に実施した前回調査に続き、「人事部の非管理職層」に焦点を当てたもの。人事部の非管理職層社員のキャリア志向などの実態を定量的なデータで把握することにより、前回調査にて実現率が29.7%であった戦略人事の推進に向けた取り組みのポイントを見出すことを目的に実施した。
調査の概要と結果は以下のとおり。
人事部の非管理職層がこれまでに経験したことのある人事職域は「人材採用」「労務管理」が多い傾向
人事部の非管理職層の総合職478人に対し、これまでに経験したことのある人事職域を聞いたところ、「人材採用」(61.9%)、「労務管理(給与・勤怠・福利厚生)」(57.1%)が多かった。しかし、労務管理は「経験があり、今後やりたくない」人も33.9%と多い。「人事戦略・企画」「組織開発」は、「経験はないが、今後やりたい」人が多い傾向にある。
人事部の非管理職層が、今後経験したい人事職域ついては、「組織開発」「人事戦略・企画」「人材開発・育成」に対して意向が高く、「人事管理」「労務管理」「労使管理」に対して意向が低い傾向
人事部の非管理職層(総合職)に、経験したことのある人事職域に対して、今後もやってみたいかの経験意向を聞いたところ、「組織開発」「人事戦略・企画」「人材開発・育成」への意向が高く、「人事管理(評価・報酬・異動管理)」「労務管理(給与・勤怠・福利厚生)」「労使管理(組合交渉・転身支援など)」への意向が低い結果となった。また、未経験だけれどやってみたい人事職域については、「人事戦略・企画」への意向が28.9%と最も高かった。
人事部の非管理職層の管理職意向は、「人事戦略・企画」「人材開発・育成」の担当者では高く、「労務管理」「人事管理」「HRテクノロジー推進/人事データ活用」の担当者では低い傾向
人事部の非管理職層(総合職)に対し、現在担当する人事職域別にキャリア意向を聞くと、「人事戦略・企画」「人材開発・育成」の担当者では管理職意向が高く、「労務管理(給与・勤怠・福利厚生)」「人事管理(評価・報酬・異動管理)」「HRテクノロジー推進/人事データ活用」の担当者では管理職意向が低い傾向がみられた(図表3の右端列)。
人事部の非管理職層がやりがいを感じる業務の特性は、「従業員対応」「従業員支援」「専門性発揮」
総合職に限らず人事部の非管理職層650人がやりがいを感じる業務の特性を見ると、「現場に寄り添い困りごとを解決している」などの「従業員対応」、「社員の成長を感じる機会がある」などの「従業員支援」、「高い専門性・スキルを要する仕事をしている」などの「専門性発揮」において、やりがいを強く感じる傾向がみられた。
人事部の非管理職層が業務上、強く意識している視点は「従業員側の視点」
人事部の非管理職層に、誰の視点を意識しながら仕事をしているかを聞いたところ、全体的に、経営視点に近い「人事部長」の視点や、事業部視点に近い「事業部長」の視点よりも、「従業員」の視点を強く意識している傾向がみられた。
人事部の非管理職層の70.7%の人が何らかの学習行動をとっている
人事部の非管理職層に学習行動について聞いたところ、総合職の70.7%の人が、「人事労務に関することを自ら学んでいる」「人事労務以外の領域(経営や心理学など)について自ら学んでいる」「人事に関する勉強会・交流会に参加している」のいずれかの学習行動をとっている。
調査の結果について、同社は以下のように述べている。
今回の調査からは、人事部の非管理職層は、従業員に寄り添った視点を意識的に持っている人が多く、人事職域の経験意向や昇進意欲の傾向から、多くが「従業員目線に立った人事企画や人材開発・育成」を好んでいる様子もうかがえた。また、7割の人が人事業務に関する学習を自ら行っているなど勉強熱心な側面も見て取れた。
人事企画や人材開発・育成は重要な人事の役割であり、それらの役割を志向する割合が高いことや、従業員に寄り添う視点、学習行動の実態は素晴らしいものだ。一方で、経営や事業部の視点に対する関心度については、今後の戦略人事の実現において懸念が残る。戦略人事には、「従業員視点」「事業視点」「経営視点」の3つの視点が必要だ。特に、「経営視点」については、次世代経営人材プールに早々にエントリーされるようなポテンシャルと意欲を持つ人材を、人事部に配置することが欠かせない。人事部としてのタレントマネジメントが求められているといえるだろう。
なお、同調査の全結果データは、パーソル総合研究所のWebサイトで確認できる。
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