本記事は、2022年12月8日にオンライン配信されたセミナー「スタートアップ人事 石黒氏に学ぶ~100人を超えた組織におけるミドルマネジメント強化術」(主催:Unipos株式会社)をもとに構成しています。
前回の「セッション編」はこちらから。
石黒 卓弥(いしぐろ たかや)氏
株式会社LayerX 執行役員(HR, PR)
NTTドコモに新卒入社後、2015年1月、60名のメルカリに入社し人事部門を立ち上げ、5年で1800名規模までの組織拡大を牽引。採用広報や国内外の採用をメインとし、人材育成・組織開発・アナリティクスなど幅広い人事機能を歴任。2020年5月、LayerX入社。
斉藤 知明(さいとう ともあき)氏
Unipos株式会社 執行役員 CPO
東京大学機械情報工学専攻。学業の傍ら、株式会社mikanにてCTOとしてスマートフォンアプリ開発に従事。その後、Fringe81株式会社に入社。1年間エンジニアとしてアプリ開発等を行った後、Unipos事業責任者となる。2017年12月28日、Unipos株式会社の代表取締役社長に就任。2019年4月には、Fringe81株式会社の執行役員に就任。2021年10月より現職。
Slackの日報を通じて社員のコンディションに目配り
斉藤知明氏(以下、斉藤) 参加者からの最初の質問です。LayerXでは、2022年春の時点で0名だったミドルマネージャーを、半年で14名に増員されたと伺いました。一挙に人数が増えたわけですが、その方たちが適正に機能している=期待した役割を果たしているかどうかを、どのようにモニタリングや評価しているのでしょうか?
石黒卓弥氏(以下、石黒) 一般的には、例えばマネジメントサーベイなども1つのやり方ですが、自分なりの工夫としては、日報を毎日まめに書いています。日報といっても、その日にやった仕事やこれからやること、その他雑談みたいなことが多いです。この間行ったラーメン屋がうまかったとか(笑)。
この日報はSlackで書いています。Slackだと誰がポストしたかや、頻度・回数をモニターできるんですね。それで1週間に1度も書いていない人がいると、その上司のマネージャーに「◯◯さん、コンディションは大丈夫?」といった具合に知らせてあげる。性悪説的に「日報を書かずに帰ってるんじゃないか?」ではなく、オーバーフローしているんじゃないか、変わったことが起きているのではないかと、異変を早めに見つけて対応することが目的です。
斉藤 とりわけコロナ禍において、人の動きの多いスタートアップは、お互いの顔が見えにくいという悩みがありますよね。
石黒 特に日本企業の場合、お互いのつながりが大事です。それを今はSlack=日報というツールで、「◯◯さん、今日はこれを手がけているのか」とか、「それなら、僕が詳しい人につなげてあげるよ」とかやっているわけです。もちろん数字で測る部分はあって、3ヵ月・6ヵ月ごとに面談も行っているんですけど、日報はその密度を上げるという意味で毎日見て、リアクションを書き込んでいます。
斉藤 次の質問です。組織として必要だと判断してマネージャーにアサインした人が、必ずしもそれに前向きでない場合、モチベーションをどうすれば上げられるでしょうか?
石黒 こちらで勝手にあれこれ考えないで、「なぜマネージャーを担うのに前向きではないのか?」と、理由をきちんと聞いたほうがいいです。必ず理由があるはずです。例えば、メンバーと会話するのが苦手だとか、自分はプレーヤーのほうが好きだとか。プレーヤーのほうが年収を上げられるといったことも、もちろん立派な理由です。
一方で、この人にマネージャーをやってほしい理由が会社にはあるわけですから、個人ではなくチームで業績を上げる意義や、マネジメントは将来必要になるスキルだから身に付けておいたほうがよいといったことを、きちんと伝えましょう。その上で両者がどうしても一致しなければ、無理やり押し付けない。
ただ、人事異動の時期である3~4月には尻込みしても、8~9月くらいに「やっぱり、やってみようかな」と思い直すことは十分にあります。組織や状況が変化したり周囲を見たりしてその気になる、ということだってあります。だから僕は(ハードルを下げるため)最初に「パーフェクトパーソンを目指してほしいわけではないよ」ということを、そのマネージャー候補にはっきり伝えておきます。本人の意思を無視して、「会社が必要だから」と押し切ることは絶対にしません。