武石 美有紀(たけいし みゆき)氏
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ HRDサービス開発部トレーニング開発グループ研究員
2016年リクルートキャリア(現リクルート)入社。企業の採用領域の課題解決支援や社内の新人研修の企画・研修講師業務に携わる。現在は、リクルートマネジメントソリューションズにて、主に新人・若手社員向けのトレーニングサービスの企画・開発に従事。
桑原 正義(くわはら まさよし)氏
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ HRDサービス開発部トレーニング開発グループ主任研究員
1992年4月人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業、商品開発、マーケティングマネジャー、コンサルタント職を経て2015年より現職。探究領域は「VUCA×Z世代の新人育成のアップデート、“個を生かす”生成アプローチ」NPO法人青春基地(プロボノ)。立教大学経営学部BLP兼任講師。
新入社員育成の難しさとZ世代の価値観
桑原氏によると、新入社員の育成で生じやすい問題は15年以上ほどんど変わっていない。ただ、Z世代が社会進出してきたこの2~3年は「メンタル不調」「早期離職」「成長鈍化」の3つが職場で問題視される傾向が高まっているという。この課題に対して桑原氏は、新入社員にとって「自律的に学習・成長していく力」がこれから重要になると述べた。
「昔は、先輩や上司が正解を持っており、自分で考えて愚直に行動していけば、いつかは結果が出る時代でした。今はVUCAと呼ばれるように、愚直に行動しても結果が出にくい時代です。自分で考えて行動することに加えて、うまくいかなくてもその経験から学習して成長する力の重要性が増しています」(桑原氏)
では、Z世代の新入社員に対し、会社はどのようにして自律的な学習・成長していく力を育成していけばよいのだろうか。育成のためには、Z世代の価値観を知ることが必要だという考えから、武石氏は同社が毎年行っている「新入社員意識調査 2023」を解説した。
働くうえでの意識
武石氏は、働くうえでの意識で注目したい傾向に「個の意識の高まり」を挙げた。「働きたい職場」の項目では「お互いに個性を尊重する」が過去最高の結果に。「上司に期待すること」では「1人ひとりに対して丁寧に指導すること」が過去最高になっており、個を尊重する回答への選択率が全体的に高まっている。一方で、「働きたい職場」では「アットホーム」が過去最低になったように、価値観の一体化を連想するような回答への選択率は下降している傾向があると武石氏は述べた。
また、「確実性の重視」の傾向も高まっているという。武石氏は「働くうえで大切にしたいこと」の項目で「任せられた仕事を確実に進めること」の割合が高まっている一方で、「何事も率先して真剣に取り組むこと」の割合は減少していることに触れ、自律を苦手とする若手層の特徴が結果に出ていると述べた。
「企業からも、若手は与えられた仕事は真面目にしっかりやる一方で、もっと自律的に動いてほしいという声をよく耳にします」(武石氏)
仕事観
新入社員の仕事観で注目すべきポイントとして、「仕事で重視する」の項目では「成長」「貢献」の選択率が高く、「競争」が低いと武石氏は言及した。競争で1位を目指すといった外発的動機付けよりも、成長や貢献といった内発的動機付けを重視する傾向が見られるという。
また、新入社員は仕事において「タイムパフォーマンス」を意識するようだ。
「たとえば、答えやヒントがあるなら、先に教えてほしいという若手は多いです。弊社が提供している新入社員研修でも、昔はまずやってみて、うまくいかなくてもそこから内省して学ぶという順番でした。しかし、現在提供している研修は、まず、ある一定の考え方や方法を伝え、その後に実践し、振り返るというサイクルを回しています」(武石氏)