本記事は『わたしからはじまる心理的安全性 リーダーでもメンバーでもできる「働きやすさ」をつくる方法70』から一部を抜粋したものです。掲載にあたって編集しています。
プロジェクト終了後に発表会をする
「振り返り」のすすめ
サイボウズでは、1つの仕事やプロジェクトが終わったときに「振り返り」をします。PDCAサイクルでいうC(Check)の部分ですね。効果的な振り返りのしかたについては、書籍もたくさん出ていますが、わたしたちはKPT法をよく使います。やってみたことに対して、引き続き続けたいこと(Keep)、改善が必要なところ(Problem)、次チャレンジしたいこと(Try)を箇条書きにして、関係者に共有するやり方です。
振り返りのよい点は、自らの行動を客観的な視点で見返しができること、それを聞いた人が学びを得られることにあります。それにより、次に似たようなことを行うときに「あのときああしたからこうしよう」と、共通の認識のもとで対策を打てる点、つまりチームのノウハウができることが大きなメリットです。
たとえば、あるセミナーを企画して実施したとしましょう。セミナー終了後に、関わった人たちで振り返りを行います。集客について、サイトについて、内容について、全体的な進め方について、アンケートをもとになど、さまざまな視点で振り返って意見を出し合います。
わたしたちは30分~1時間で振り返りを行い、記録に残しておきます。ここでの意見は前述の通りすべてチームのノウハウになっていきますし、振り返りを繰り返すことによって、改善活動が継続的になります。振り返りによって、よりよいものを生み出そうとするポジティブなサイクルをチームにつくることができます。
チーム活動で大事な「学習」
チームワークの成果の1つに「学習」があります。仕事のすべてを1人でやることは不可能です。だからこそ、メンバーのいろいろな活動を知り、そこから「なるほど!」といった知見を得られることで感じる楽しさがあります。こういったことは、みなさんも経験があるでしょう。
仕事の面白さとは、こうした学びを通して得られるものでもあります。自分が何を学んだかを共有することは、他の人の学びにもなります。そして共有するために整理することも改めて自分にとっての学びになることも多いです。
学びが継続的に生まれるチームにしていきましょう。お互いの学びを共有し合えるチームにするために、リーダーは振り返りの習慣や、学びを共有する時間を業務内につくっていきましょう。もちろんメンバーから提案しても大丈夫です! こうした時間をつくり合うことであんぜんチームになっていきます。
会議をオープンスペースで実施する
情報が閉ざされていることが相互の不信感を生む
チームでミーティングをする際に、他部署の人に声が聞こえないような密閉された部屋に行くのは普通です。しかし、そのミーティングを他の人にも声が聞こえるようなオープンスペースで実施してみましょう。
組織やチームの中で、情報流通がどのようになされているかはとても重要です。できれば、多くの人がさまざまな情報に自由にリーチできて、また質の高い情報が常に組織・チーム内に流れているようにしたいものです。
逆に情報の量が少なく、内容が統制されていると、メンバーは経営やリーダーに対して不信感を抱くようになります。みなさんの組織では、「情報の質や量の不足」が不信感を生んでいるような現象はないでしょうか。
情報共有が当たり前の社会
なぜ、情報が重要なのでしょうか。わたしたちは、日常業務に必要な情報は報連相というかたちでやりとりしています。しかし一見、日常業務の遂行とは直接関係がないように見えるさまざまな情報がとても重要なのです。そのような情報のことを「背景情報」といいます。
さまざまな背景情報の例
- 会社や部署全体の動きや方向性などの全体感情報
- 意思決定に至る過程がどのようなものであったかというプロセス情報
- 他チームの状況や悩み、課題などの周辺情報
- 決定事項や数値情報だけではない、人の気持ちや想いなどの感情情報
このような情報に触れることで、メンバーの1人ひとりが自分の頭で状況を整理し、問題や課題を発見することができるようになります。すると、「この通達事項は、このようなプロセスで決定されたのだな。だったら、自分の仕事はもっとこう改善しなければ」「この方針には、リーダーのこういう想いが反映されているのだな。自分も同じ思いだから一緒に頑張ろう」という風に思えるようになるのです。変に情報を秘匿することは、むしろ不信感につながります。
オープンな雰囲気の組織文化を創りだしている会社では、情報もオープンにしていることが多いのです。昔は組織の上層部だけが集中的に情報を握っていることがありました。今はインターネットの発達などによって、みんなが情報を共有していることが当たり前の社会です。その中で情報を統制しすぎることは、不信感につながります。
意図的に情報をオープンにする
多くの人は、意図的に情報をクローズしようとしているわけではありません。相手に直接関係ない情報は伝えないという日頃の習慣によって、流通する背景情報がどんどん少なくなっているだけなのです。
特にリモートワークでは、より背景情報が伝わりにくくなっているでしょう。したがって、相手に知らせることができない情報以外は、原則すべてオープンにする、というように、意図的に情報をオープンにする工夫が必要なのです。
会議をオープンスペースで実施することのメリット
背景情報を相互に伝え合うためには、「雑談」が重要です。しかし、それ以外の方法として、会議をオープンスペースなどの周囲に声が聞こえる場所で開催するという手法を紹介します。
会議をオープンスペースで実施というと、「そんな機密情報が多い会議の内容を人に聞かれるなんてとんでもない!」という人がいます。しかし、よくよく精査してみると、実は本当に人に聞かれてはいけない情報というものは、とても少ないのです。人事情報、セキュリティ関連、コンプライアンスに関するもの、守秘義務があるものは、情報の取り扱いに注意が必要ですが、それらの情報以外の議題では、会議をオープンにしてみることで、さまざまな効果があります。
まずは、他チームの人があなたのチームの置かれた状況をとてもリアルに正確に理解します。またメンバーの想い、気持ちを理解してもらうことができ相互に支援し合うような協力関係が生まれます。そして、情報をオープンにしようとする姿勢そのものが、あなたのチームに対する周囲の信頼感を高めます。
オープンな会議を行っている組織は意外と多い
スコラ・コンサルトでは、以前から経営会議をオープンに行っています。話を聴きたい人はいつでも参加できますし、自分で経営メンバーと話したい議題を持ち込んで議論をすることもできます。
最近では、企業のオフィスもフリースペース・スタイルが増えてきたこともあり、以前よりオープンな会議が実施しやすくなっています。特にオンラインミーティングでは物理的な制約が小さいですので、ミーティングを「参加自由」にすることもできます。
わたしが知っているある会社では、やはり役員会議をフリースペースのど真ん中で実施していました。社員はフリースペースで自分の仕事をしながら、横目で役員会議を見て、話していることを耳にします。その会社の経営層に対する信頼、方針の浸透度が極めて高かったのは言うまでもありません。
チームミーティングなどのさまざまな会議をぜひオープンにしてみましょう。
新規入社の人とは2時間雑談をする
コロナ禍での新規メンバーとリーダーの悩み
リモートワークが普及して、多くのチームが悩んでいることの1つに、新しいメンバーの迎え入れがあります。既存のチームは、チームビルディングもできており、リモート下でもそれなりにコミュニケーションがとれるのですが、新規メンバー(新入社員や中途入社メンバー、異動でチームに加わったメンバーなど)は、そもそも関係性がないところからのスタートなので、とかくコミュニケーションがギクシャクしがちです。
コロナ禍では次のようなリーダーの悩みをよく耳にしました。
コロナ禍でよく耳にしたリーダーの悩み
- 「いつもうちの部署は、新規入社があると飲み会で、一気に打ち解けるんだけれど、コロナ禍で歓迎会もできずに、入社から半年経ったけれどまだよく互いの人となりがわからないんですよ」
- 「新しく異動した部署のメンバーとまだ1度もリアルに会っていないんです。仕事はそれなりにやっていますが、深いところでコミュニケーションがとれているかというと不安です」
チームへのランディング(着陸)の大切さ
実はコロナ禍下で入社した多くのメンバーは、仕事に関しては、それほど問題を感じていないケースが多いのです。リモートでも業務の指示や報連相はリーダーが行っており、問題があれば対処を行っています。仕事へのランディング(着陸)は比較的順調なのです。
その一方で、メンバー同士で相互理解と信頼関係を築いて、チームの一員として加入するというチームへのランディングはうまくいっていないケースが多いのです。仕事とチーム、両方がしっかりとランディングできることが大切です。
互いの「人となり」を知り合うことの絶大な効果
こういうときは、思い切って、互いの人となりを知り合うための話し合いの時間を設けてみましょう。実は互いの人となりを知り合うことには大きな効果があります。
スコラ・コンサルトでは、新たなメンバーが入社するたびに、必ず全員(約40名)と面談をする「全員面談」を実施しています。最低でも2時間はとって、数カ月くらいかけて、すべての社員とジブンガタリを通して、互いの人となりを知り合います。スコラ・コンサルトでは、コロナ禍でも新規入社のメンバーがいたのですが、このような取り組み手法によって、チームビルディングが特に問題なく進んでいます。2時間は難しいという場合は1時間でもよいですし、ランチを一緒に行くなど、さまざまな工夫もできます。