リクルートマネジメントソリューションズは、現在の職場で障害がある人と一緒に働いて3ヵ月以上経過している380名に対し、「障害のある人と一緒に働くことに関する実態調査」を実施した。
「対人関係などに関する困難を抱えている人」と働いている人が最多
どのような困難を抱えている人と一緒に働いているかについて、「特例子会社等」と「一般組織」に分けて調査した。両群とも最も多いのは「対人関係や対人コミュニケーションに関する困難を抱えている人」であった。「特例子会社等」では61.5%、「一般組織」では44.7%となっている。
また、「特例子会社等」では、2番目に多いのは「体力的、気力的な困難を抱えている人」(50.0%)、「行動や感情をコントロールすることに困難を抱えている人」(50.0%)であった。「一般組織」では、2番目に多いのは「移動や視聴覚に関する困難を抱えている人」(39.7%)、次いで「体力的、気力的な困難を抱えている人」(27.5%)という結果となった。
この結果について、同社は次のように解説している。
「一緒に働く立場から見て取ったり感じ取ったりできる困難の状況には、限りや偏りがあると思われるが、一緒に仕事を進めていく中では、『対人関係や対人コミュニケーションに関する困難』は、とくに認識されやすい1つだということが示唆される。また、総じて『特例子会社等』のほうが選択率が高いものの『一般組織』でも、さまざまな種類の困難を抱える人が、同じ職場で働いていることが見て取れる」
「能力が発揮できる仕事に配置」の配慮を行っている割合が高い
職場では、障害のある人に対してどのような配慮を行っているかについて、「特例子会社等」と「一般組織」に分けて調査した。「特例子会社等」で最も多いのは「調子の悪いときに休みをとりやすくしている」(69.2%)、次いで「能力が発揮できる仕事に配置している」(66.7%)であった。「一般組織」で最も多いのは「能力が発揮できる仕事に配置している」(59.6%)、「苦手なタスクを避けて得意なタスクを任せるようにしている」(59.6%)となった。特性に応じて能力が発揮できるような業務アサインは、両群共に実施率が高いことが分かる。
一方で、両群間で実施率の差が大きかったのは、「支援スタッフを配置している」(特例子会社等38.5%、一般組織13.6%)、「職場でのコミュニケーションを容易にする手段を用意している」(同53.8%、33.8%)、「働く場所に関する自由度を高くしている」(同56.4%、38.4%)、「調子の悪いときに休みをとりやすくしている」(同69.2%、52.6%)となった。
人事からの説明などが個人的な働きかけを高める
回答者個人が、一緒に働く障害のある人に対し、どのような働きかけを行っているかについて、「一般組織」に対象を絞って調査をした。支援的コミュニケーションに関する3項目(「うまく仕事を進められるよう、仕事を手伝ったり問題解決に協力したりしている」「必要とするときに、話を聞いたり相談にのったりしている」「仕事での貢献に対して、感謝を示している」)について尋ねたところ、いずれも「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」の合計が約6割と半数を超え、「どちらともいえない」が約3割という結果になった。
また、前述の3項目を「個人的な働きかけ」として尺度化し、個人的な経験や職場での経験の違いごとに、平均値の差を比較した。「学校や地域において、障害のある人と日常的な接点がある(あった)」や「自分自身が、障害を理由とした配慮を受けて働いている(働いたことがある)」といった、個人的に障害のある人に対する理解を深める経験の有無により、働きかけの程度には一定の差が見られた。
加えて、働きかけの程度に差が見られたのは、職場での経験の有無である。「人事や上司から障害特性や必要な配慮についての説明があった」「本人と障害特性や必要な配慮について話し合った」「どのような支援をしていけばよいかについて、職場で話し合った」といった職場の取り組み経験があるほうが、個人的な働きかけの程度が高かった。この結果について、障害のある人に対する理解を深めるような個人的な経験に巡り合わない場合でも、職場において、説明や対話をしっかりと行っていくことで、働きかけを促進していけるといえると同社は述べている。
仕事や環境を整えれば、職場の戦力になると感じた人が約8割
一緒に働くことで学んだこと・気づいたことについて、約8割の人が「仕事や環境を整えれば、障害がある人も十分に職場の戦力になると感じた」(78.5%)と回答した。一緒に働く経験が、障害者の就労や活躍に対する理解を大きく促進することが分かる。
また、一緒に働くことで学んだこと・気づいたことについて、具体的な記述では、「考えがブレないところは、見習いたいと感じた」「障害があっても働くという意思に、感銘を受けた」「熱心に仕事をする姿勢は、とても尊敬している」のように、その働きぶりから影響を受けたというコメントが多く寄せられた。障害のあるなしの垣根を越え、ともに働く仲間として刺激を受けていることが分かる。
一緒に働く影響は「お互いの個別事情への配慮が高まった」が最多
障害のある人と一緒に働くことで、どのような影響があったかについて、最も多かったのは「お互いの個別事情への配慮が高まった」(53.6%)だった。
自由記述では、「障害のある人だけでなく、いろいろな性格、特性をもったスタッフがチームで働きやすくするための方法を、考えるきっかけになった」「できないことを、苦痛を伴ってまでやるより、できることをやろうと、プラスの方向で動くようになった」といったコメントが見られた。
次に、障害のある人と一緒に働いて、困っている点や要望したい点について、自由記述で回答を得たものを抜粋した。大きく分けて、障害者支援の拡充に関するものと、サポートする側への配慮や要望に関するものが見られた。
- 障害者支援の拡充に関するもの
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- 障害者支援の拡充に関するものは、「事前の説明」について、「仕事をする中でどのような障害があるかを少しずつ理解していったので、最初に説明があればもう少し関わりやすかったと思う」「会社から具体的な説明がなされておらず対応に困ることが多かったので、雇用前にしっかりとした説明が必要」といったコメントが見られた。
- 「障害がある人への待遇や執務環境の改善」に関するコメントも散見された。「仕事の内容は障害に配慮されているが、フルタイムで働いてくれているので、給料がもう少し上がってほしいと思う」「今の部署だけでなくいろいろな部署での仕事を経験し、自分に合っている部署を見つけさせてあげてほしい」「肢体不自由な方に対する施設面のサポートが不足しているので、予算化したうえで早急に取り組んでほしい」などは、一緒に働く同僚に対するさらなる公平性を要望する声である。
- サポートする側への配慮や要望に関するもの
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- サポートする側への配慮は、「障害のある人は、どうしたらうまくいくかを考える機会がある。一方、障害がなくとも苦手なことや向き不向きがあるが、それは話し合われないのをどうかと感じる」「障害のある人だけかなり優遇されていると感じることがある」のようなコメントが見られた。
これを受けて、同社は次のように解説している。
「障害のある人と一緒に働くことで、職場全体としてお互いへの個別配慮が高まる傾向を紹介したが、逆に、それがない場合、こうした不満につながる可能性があると思われる。また、取り組みが職場全体のものでない場合には、『同僚で協力してサポートすることに対して不満はないが、上司が協力に積極的ではなく、スタッフに依存していることは不満』『退職者が出ても問題点、改善点などを考えることがないため、また採用しても離職してしまう』のような声につながり、ともに働く体制を維持することは難しいだろう」
なお、同調査の概要は次図のとおり。
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