育成の最終成果を握るのは現場のマネージャー
企業の体系的な人材育成は、前回まで見てきたとおり、育成のフレームワークをつくることから始まります。具体的には、社員が成長実感を得られるように成長段階を定義する「キャリアラダー」をつくること。各ラダーに応じて育てたい能力(育成要件)を設定すること。そして、それらの能力を実際どのような手段で育てていくかを3つの育成方法(OJT、Off-JT、自己研鑽支援)から選択し、最適なものを設定することです。
これらの取り組みは、全社に統一的な仕組みづくりでもあるため、人事や経営層といった組織リードで行っていくのが一般的です。
しかし、実際に社員が活躍するフィールドは「現場」であり、彼らに最も近い立場にいるのは現場マネージャーたちです。現場マネージャーの、メンバー1人ひとりに対する日常的なコミュニケーションやアサインメントなどの具体的な育成実践を通してはじめて、組織一体となった人材育成を行っているといえるでしょう。
その意味で、「育成の体系化」と「育成の実践」は人材育成の両輪であり、どちらも欠かすことのできないものです。人事や経営層がどんなに精緻な育成の仕組みをつくったとしても、現場でマネージャーに実践してもらえなければ意味がありません。
このように育成の最終成果を握っているのは現場のマネージャーなのです。
そもそもマネージャーの仕事を整理すると、次図の①~⑥に分かれます。
これらすべてが育成の実践につながるものですが、今回は、とくに②アサイン(割り当て)と④コーチング(動機付け)についてのポイントを紹介したいと思います。