登壇者
髙倉 千春(たかくら ちはる)氏
高倉&Company合同会社共同代表 ロート製薬元取締役(CHRO)
1983年農林水産省入省。92年に米ジョージタウン大学MBA取得。93年からコンサルティング会社にて組織再編、人材開発に関するプロジェクトをリード。99年よりファイザー人事部担当部長、2006年ノバルティス・ファーマ人材組織部 部長、14年より味の素理事グローバル人事部長としてグローバル人事制度を構築、展開。20年よりロート製薬取締役、22年同CHROに就任。 22年より日本特殊陶業社外取締役 サステナビリティ委員長。23年より三井住友海上火災保険・野村不動産ホールディングス社外取締役。将来の経営を見据えた戦略的な人事戦略、人材育成を推進。
鬼頭 伸彰(きとう のぶあき)氏
ディップ株式会社 執行役員CHO(最高人事責任者) 人事総務本部長 兼 ディップ総合研究所長
建築設計事務所勤務を経てリクルートキャリアにて中途入社。営業職後、人材開発部門の責任者として全社の人事企画、研修企画、組織開発を経験。OJTソリューションズにて組織開発プログラムの開発およびコンサルタントを経験。その後、技術者派遣のメイテックにて人材開発部門の責任者を経て、2014年よりディップ入社。現在は執行役員CHO (最高人事責任者)として「人が全て、人が財産」の信念のもと、「社員幸福度No.1」を目指して採用や社内の組織づくりに取り組む。
生成AIの得意分野は主に4つ
人事業務でChatGPTを活用しているディップ。それをけん引する鬼頭氏は、文章系の生成AIの得意分野は次の4つに分けられると述べた。
「1つ目は文章を読み取る力です。ビジネスパーソンの仕事は、文脈を読み取る力が求められることが多い。たとえば、新卒採用活動において、学生の書いたレジュメを読んで、伝えたいことを読み取る作業がありますが、このような仕事は生成AIが得意な分野です」(鬼頭氏)
2つ目はカテゴリ分け。たとえば、社員から回収したアンケートを読み込んで、代表的な意見を複数に分ける作業も生成AIは得意なのだという。また、3つ目は文章を整える力、4つ目はアイデアを出す力である。
生成AIがサーベイ分析の精度を向上
これを受けて高倉氏が、ディップではこれら4事象をどのように活用しているのかと尋ねると、鬼頭氏は事例を交えながら同社の取り組みを紹介した。
まず挙げたのはカテゴリー分けの事例だ。ディップでは、職場サーベイの回答と数値を生成AIにすべて読み込ませて職場の特徴などを分析させているという。
鬼頭氏は、人間はサーベイ結果を分析する際に思い込みが入ってしまうため、職場の特徴や傾向の読み取りに偏りが出てしまう場合があると指摘。一方で生成AIはバイアスが低く、フラットに職場の状況を分析できるため、職場の状況が明らかになりやすいのだと述べた。
「最終判断は人間がすべきですが、結果を理解する入り口として、生成AIを使ってフラットに分析するのは非常に合理的だと思います。たとえば、弊社ではサーベイを行うと約3000人の回答が集まります。それを生成AIにすべて読み込ませて、代表的な意見を6つぐらいのカテゴリーにまとめてもらうよう指示をすると、かなり精度良く分けてくれます」(鬼頭氏)
また、バイアスが取り除かれることで、サーベイの結果を経営会議で報告するときにも有用だという。
「経営層にChatGPTを使って分析したと伝えることで、ある程度のバイアスは除かれていることを前提に結果を受け止めてくれるようになりました。生成AIは、こういった分析結果の信頼を高める活用の仕方もあると感じています」(鬼頭氏)