必ずチェック! ポイント
- 多様な働き方、高齢者の雇用拡大などの観点からフリーランスの活躍が日本の成長の鍵と考えられている
- 事業者がフリーランスへ発注を行う際は、「独占禁止法」と「下請法」の理解が重要となる
- フリーランスが実質的に発注企業の指揮命令を受ける労働者とみなされた場合は、一般の労働者のように社会保険が適用になるため注意が必要
関連サイト・資料
3分でチェック! フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン
「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」は、事業者がフリーランスと取引をする際に独占禁止法と下請法が適用になることや、フリーランスと雇用の考え方の違いなど、取引における注意点を明文化しています。
同ガイドラインは、次の項目で構成されています。
- フリーランスが重要視される背景
- フリーランスの定義
- 事業者がフリーランスと取引をする際に遵守すべき事項(独占禁止法・下請法)
- 事業者とフリーランスを仲介する事業者が遵守すべき事項
- フリーランスが「労働者」に該当する場合の判断基準
ガイドラインの中でも、独占禁止法と下請法に触れる事例を理解しておくことが重要です。
また、形式的には業務委託(請負契約・準委任契約)などで発注をしていても、労働関係法令上は、フリーランスの働き方の実態に基づいて「労働者かどうか」を判断をします。フリーランスが労働者と判断されれば、労働関係法令に従って社会保険を適用したり、労働時間管理を行ったりする義務が発生するため注意しましょう。
本記事の後半では、独占禁止法・下請法に触れるケースを取り上げて、事業者が遵守すべきルールを解説します。また、フリーランスが労働者と判断される基準も解説をするので、自社の発注方法の見直しの際にご活用ください。
基本的な考え方
同ガイドラインで説明するフリーランスとは、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得るもの」と定義されています。
フリーランスは個人で事業を行う者であり、労働関係法令が適用される労働者とは区別して、仕事を依頼しなくてはなりません。
【必ず理解すべきポイント】
- 事業者とフリーランスの取引全般には独占禁止法が適用される
- 事業者の資本金が1000万円を超えている場合は、下請法も適用される
- フリーランスは労働者ではないが、働き方の実態により労働者と判断されれば、労働関係法定が適用となる
フリーランスと取引を行う事業者が遵守すべき事項
事業者がフリーランスと取引を行う際に遵守すべき事項は、「優越的地位の濫用防止」と「取引条件の書面交付」の2つです。
①優越的地位の濫用防止
発注事業者とフリーランスは、強者対弱者の関係になることがあります。優越的地位にある事業者が、その立場を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは許されません。フリーランスの公正な競争を阻害する恐れがあるためです。
不公正な取引を禁止する法令が独占禁止法であり、優越的な地位の乱用防止を規制しています。
②取引条件の書面交付
発注事業者が、発注時に取引内容を書面交付しないと、発注条件を後から一方的に変えるといったトラブルの原因となります。取引条件を不明瞭にしてしまうと優越的地位の濫用を引き起こしやすくなるため、書面交付をしないことは独占禁止法上、不適切とされています。
また、発注事業者の資本金が1000万円を超える場合は下請法の対象であり、取引条件の書面交付は義務となっています。
フリーランスの承諾があれば、電子メールやSNS、クラウドストレージなど記録に残る方法で書面交付を行っても問題ありませんが、ダウンロード・保存できるよう考慮が必要です。
独占禁止法・下請法のケーススタディ(行為類型)
「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン 概要版」では、独占禁止法・下請法上で問題となる11ケースを紹介しています。
ここではそのうち、3つのケースについて補足説明をします。
ケース1:報酬の支払遅延
正当な理由なく、契約で定めた支払期限までに報酬を支払わないケースです。たとえば、「社内の手続きミスで、契約期限までに支払うのは無理そう」「繁忙期で検収に時間がかかっているからまだ払えない」など、一方的な事業者都合で報酬を支払わないことが考えられます。
ケース2:契約後の報酬減額
フリーランスから役務の提供を受けたにもかかわらず、正当な理由なく報酬減額をするケースです。たとえば、「業績が悪化したから」「予算が思ったより足りなくて」「実際の作業量が少なかったから」という理由で報酬を減額する場合が考えられます。
また、事業者の一方的な都合で役務などの仕様を大幅に変更し、やり直しを命じたことでフリーランスの作業量が増加したにもかかわらず、当初の契約の報酬額しか支払わない場合もこのケースに当てはまります。
ケース3:著しく低い報酬を一方的に決定
フリーランスが今後の取引に与える影響などを懸念して、事業者が一方的に提示してきた著しく低い報酬額を受けざるを得ないケースです。たとえば、「他のフリーランスは〇〇円だから」「急ぎで納品してほしいけど報酬額は据え置きで」など、自社都合の一方的な報酬決定や、短納期の負担増をまったく考慮しない場合が考えられます。
フリーランスに発注を行う事業者は、概要版に掲載されている上記以外の具体事例についても、一度目を通しておきましょう。
労働基準法の「労働者性」を判断する基準
フリーランスの働き方の実態により、労働者と判断された場合は、通常の労働者と同様に社会保険加入や労働時間管理、賃金の支払といった諸対応が求められるため注意が必要です。フリーランスに労働者性があるかどうかは、次表の項目を確認して総合的に判断します。
労働者性の判断基準(一部抜粋)
なお、ガイドラインと本記事で紹介している具体例に該当しても、必ずしも労働者性が認められるわけではありません。労働者性が認められるのはケースバイケースで、かつ事業者が単独で判断するのは難しいため、社会保険労務士の意見を聞き、慎重に確認をしてください。
関連記事
- フリーランス新法とは?(フリーランス・事業者間取引適正化等法)~2024年施行予定(近日公開予定)