田中 泰介(たなか たいすけ)氏
株式会社HRBrain ビジネス統括本部 フィールドセールス
新卒で人材会社に入社し、求人広告、ダイレクトリクルーティングを用いた新卒・中途採用支援に従事。その後、株式会社HRBrainに入社し、社内ギネス記録を塗り替えながら、現在も中小〜大手企業に向け、タレントマネジメントシステム、組織診断サーベイシステムの提案や導入支援を通じ、100社以上の人事課題を解決に導く。
人的資本経営に欠かせないサーベイ
田中氏はまず、人的資本経営を理解するための資料となる人材版伊藤レポートに触れた。同レポートでは「3P・5Fモデル」として、3つの視点と5つの共通要素が大切だと説いている。
- 視点1経営戦略と人材戦略の連動
- 視点2As is-To beギャップの定量把握
- 視点3企業文化への定着
- 要素1動的な人材ポートフォリオ
- 要素2知・経験のD&I
- 要素3リスキル・学び直し
- 要素4従業員エンゲージメント
- 要素5時間や場所にとらわれない働き方
中でも人的資本開示の義務化に伴い、「As is-To beギャップの定量把握」「企業文化への定着」「従業員エンゲージメント」が注目されているという。
2022年8月に公開された人的資本開示の指針でも、開示が望ましい項目として「従業員エンゲージメント」が挙げられ、ISO30414(人的資本に関する情報開示のガイドライン)で定義された11領域58項目でも「リーダーシップ(経営陣への信頼)」と「組織風土(エンゲージメント/コミットメントの状態)」が重要指標として挙げられているからだ。
田中氏は「これらの項目関する情報を集めるには、サーベイを活用していくことが不可欠だ」と語る。
また、人的資本の情報開示を考えるうえでは、「リスクマネジメントの観点」と「価値向上の観点」から整理することが大切だという。前者は定型フォーマットによって必ず対応しなければならないものであるが、後者はリーダーシップ、育成、スキル・経験、エンゲージメントといった業種やビジネスモデルによって大きく異なるものである。
人材育成方針や社内環境整備方針といった「人的資本」、そして女性管理職比率・男性育休取得率・男女間賃金格差の「多様性に関する三指針」に関しては、2023年3月期決算以降、有価証券報告書への掲載義務が課せられていることもあり、開示に向けた基盤を早急に整えていかなければならない。
そして、人的資本開示に向け「会社として何に取り組むべきなのか?」「人事としてどんな戦略を立てるのか?」これらを検討するため、サーベイを活用して会社の現状を把握する企業が増えている。HRBrainが行ったインターネット調査によると、企業全体のサーベイ実施率は67.0%。上場企業においてはすでに85.2%の企業が実施していることが分かったという。
これを企業規模別で細かく見ると、従業員数1000名以上の企業では81.4%、100〜500名の企業でも53.2%がサーベイを活用していることが明らかとなっており、2社に1社はサーベイを導入済みで、さらに「今後よりスタンダードになっていくのではないか」と田中氏は私見を述べた。