データで見えた「部下から評価される」管理職の特徴
管理職育成の方法を解説するにあたり、まずは当社の研究機関であるモチベーションエンジニアリング研究所が実施した調査[1]による、「部下から評価される管理職の特徴」を紹介します。なお、調査の概要は、本記事の最後に記載しています。
注
[1]: 株式会社リンクアンドモチベーション「部下から評価されるマネジャーの特徴」
次図は、当社が提供するマネジメントサーベイの総合スコアを「上位5%」「上位5~20%」「上位20~50%」「下位50%」の4群に分類し、群ごとに偏差値の高い5項目を抽出した結果です。
これは、「管理職の成長段階」として見ることもできます。各群の特徴を分析すると、多くの管理職は次の4つのステップを踏んで成長していくと考えられます。
- ステップ1:「孤独な管理職」(下位50%)
- 下位50%の管理職は、「毅然とした態度の明示」「オープンでフランクな姿勢」「自部署の定量目標の明示」といった項目の偏差値が高いのが特徴です。目標を示しつつ、厳しさと相談しやすさを併せ持つ管理職だといえますが、部下からの評価が相対的に低いことを踏まえると、目標達成を掲げるも部下に任せるばかりで、部下からの信頼が得られていない状態だと考えられます。部下からの信頼が不足している「孤独な管理職」だといえるでしょう。この状態の管理職は、何よりもまず部下からの信頼を得ることが必要です。
- ステップ2:「頼れるリーダー」(上位20~50%)
- 上位20~50%の管理職は、「部下への支援行動」「率先垂範行動」「部下の意見の傾聴姿勢」といった項目の偏差値が高くなっています。自ら行動・意思決定をし、部下の意見に耳を傾けて、信頼獲得の1歩目を踏み出せている状態だと考えられます。自ら率先垂範し、プレーヤーとして突出したパフォーマンスを発揮しているため、「頼れるリーダー」だといえそうです。一方で、プレーヤーの延長線上にとどまっており、管理職として期待される役割は十分に果たせていません。つまり、部下からの信頼が厚く、一定のリーダーシップを発揮できていますが、部下を主役にして成果を出すことはできていない状態です。
- ステップ3:「成果創出マネジャー」(上位5~20%)
- 上位5~20%の管理職は、「行動指針や考え方の提示」「部下の成長の方向性提示」「戦略遂行の具体策の明示」といった項目の偏差値が高くなっています。抽象的な目的・目標から具体的な役割や戦略、行動指針を設計していることや、部下の成長を支援していることが評価されている状態だと考えられます。このことから、部下の力を引き出し、組織全体で成果を生み出せる「成果創出マネジャー」だといえるでしょう。自らが動くのではなく、部下を動かすことで成果を創出できている管理職です。
- ステップ4:「組織の結節点」(上位5%)
- 上位5%の管理職は、「部署内役割責任の明示」「評価基準の提示」「業務の背景や意義の提示」などの項目の偏差値が高くなっています。業務を顧客視点で考える姿勢や、部下の目指すべき方向性や評価基準を提示していること、業務の背景や意義を伝え、部下のやりがいを創出していることが高く評価されている状態だと考えられます。会社のビジョンや経営戦略を組織に浸透させ、事業の成果と部下のやりがいを同時に生み出せているといえるでしょう。事業の成果と部下の成長をひも付けたマネジメントができており、「組織の結節点」として機能している管理職です。すべての管理職が目指すべき理想像だといえます。
管理職を育成する際は、自社の管理職がいまどこのステップにいるのかを把握したうえで、それぞれの管理職に最適な育成施策を講じる必要があります。次ページから、各ステップの管理職が次のステップに上がるためのポイントをお伝えします。