人事情報を統合・分析し意思決定に活かす「人事情報活用基盤」
それでは人事情報の活用基盤として、「タレントパレット」がどのように活用できるのか。ログインすると社員の顔写真が並び、クリックすると蓄積している情報がひも付いていることが分かる。プルダウンメニューで複数の項目を選ぶと、その掛け合わせがマトリクスで表示される仕組みだ。
タレントパレットでは、人事評価の機能で評価運用を行うと評価データが蓄積されていく。また、勤怠管理システムとの自動連携で残業時間のデータを取得できる。そこからたとえば、残業時間×評価で一覧化することで、短時間で成果を上げている“ハイパフォーマー”を見つけ出すことができる。このときも顔写真をクリックすれば、サマリーページから異動や昇格の履歴、研修状況、スキル・資格、上司との1on1の記録、売上の推移など、ひも付けられた情報をすぐに閲覧できる。
望月氏は「データを一元化し、簡単に分析して可視化できることでペーパレス化も進み、検索作業や資料づくりといった業務の工数削減に寄与する。しかし、本来の目的は効率化ではなく『情報活用』にある。その観点で情報活用基盤を整備する必要がある」と訴えた。たとえば、人材の最適な配置、離職防止、エンゲージメント向上、人材育成など、企業の課題に応じて優先順位を立てたうえで選定することが重要というわけだ。
今後、こうした人材情報活用基盤には、人事情報などの「人事データ」に加え、適性検査や面談記録など人材の内面を表す「人材データ」、さらに売上などの「業績データ」、財務会計データなど人事以外の「非人事データ」が集約されていく。ここまで多様な情報が集約されると、「検索・活用にコツが必要ではないか」と懸念する方もいるだろう。これに対する有効なアプローチが「生成AIの活用」だ。
タレントパレットには生成AIが組み込まれており、蓄積した社員情報から社員の紹介文や、分析結果の解説文などを自動生成できる。また、資格などのキーワードのほか、自然文によっても社員を検索できるので、たとえば「新規事業に向いている人」というような検索でも、経験や適性など他の情報を組み合わせて結果を抽出できるという。さらに、職能で絞り込んだり、気になる人の紹介文を閲覧したりすれば、適切な人材登用に役立てられる。
望月氏は、「AIを活用するといっても、人事の意思決定を自動化してすべて委ねるというものではないと考えている。しかし、情報を自動的にまとめるなど、より人間が的確な示唆を得やすい形で表示されることで、業務の効率化に加え、より人の意思決定を高度化することに大きく貢献できる」と語った。近年では評価などにもAIを活用し、上司に部下の「頑張ったこと」をサマライズして提供したり、目標設定時にアドバイスしたりという機能として搭載したという。