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HRzine Day 2024 Summer セッションレポート | #3

タレントマネジメントシステムを内製! LINEの人事がゼロから構築・運営して得た経験とは

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 タレントマネジメントに取り組む企業が増える中、機能の充実したタレントマネジメントシステム(以下、TMS)も普及してきた。そんな中あえてTMSの内製に挑み、運用に成功した事例がある。当時のLINE株式会社(以下、LINE。現在のLINEヤフー株式会社)の「P-Karte」「O-Karte」という独自システムだ。2024年7月25日に開催された「HRzine Day 2024 Summer」に登壇したLINEヤフー株式会社 人事総務グループ ピープルアナリティクスラボチームの佐久間祐司氏は、TMS内製化の背景とメリット・デメリット、運用のリアルな実態を語った。

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LINEが内製したTMS「P/O-Karte」とは?

 LINEが開発したTMSは、従業員個人のデータを閲覧する「P-Karte」と、チームなどの組織のデータを見る「O-Karte」の2種類。現場の役職者は自分の配下のメンバーの情報を閲覧でき、人事は全社のデータを閲覧できるシステムだ。また、システム管理者であった佐久間氏は、データを取り込むためのファイルアップロードや、閲覧権限の管理などを行っていた。

佐久間 祐司氏

佐久間 祐司(さくま ゆうじ)氏

LINEヤフー株式会社 人事総務グループ ピープルアナリティクスラボチーム

大学卒業後、ワトソンワイアット(現ウイリス・タワーズワトソン)で人事コンサルタントを務め、面白法人カヤックで人事を経験。同志社大学心理学研究科前期博士課程修了後、メタップスを経て2017年にLINEに入社。HRテクノロジーや人事データに関連するシステム企画・運用・データ分析などを幅広く担当。

 佐久間氏は、P-Karteを例にシステムの画面イメージを共有した。

[画像クリックで拡大表示]

 「画面のように、メンバーの名前で検索をかけるとその人の顔写真や所属先を閲覧できます。真ん中がタイムラインのようになっていて、時系列で360度評価の結果や勤怠のデータを見ることが可能です。一見すると、サードパーティーのTMSと変わらない一般的な機能を備えたシステムです」(佐久間氏)

 LINEがTMSの内製開発に着手したのは2017年。ヤフーと合併する前の当時は、毎月何十人も入社する組織の拡大期であり、人事は採用・オンボーディング業務に追われていた。また、人事の定期発令の回数はなんと年24回。組織図も年24回書き換わりつづけるので、「作成した組織のデータが、2週間で最新とはいえなくなる」という状況だった。

 人事部が目の前の課題に追われ、長期的なシステムの計画を立てるのは難しい状況の中、佐久間氏が入社。「人事データの分析をやりたい」という思いがあった佐久間氏は、新人の立場でゼロから課題を捉えられたのはよかったと振り返る。

 ここでポイントなのが、「TMSを導入する」以前に、「人事データを利活用する」という目的があったということだ。「TMSを導入したいという声は当時はほとんど聞きませんでした。それよりも、人事が社員と面談する際に従業員の背景情報が分かったり、評価履歴を簡単に閲覧できたりするシステムをつくれないかと、社内IT部門や社外SIerとディスカッションするうちに、こういう形がよいのではというシステムの全体像が見えてきました」と佐久間氏。

 システム全体の仕組みは次図のとおりだ。複数の人事系のシステム(左)から、HR Data Lakeと呼ばれる統合データプラットフォーム(中央)にデータを集約する。そこから3つの出し先に分けて利用していく(右)という構造である。そのデータの出し先の1つが右上のP-Karte・O-Karte、つまりTMSだった。

[画像クリックで拡大表示]

 「データ活用という探索的な取り組みだったので、そもそもTMSの構築がミッションというわけではなかった。また、私自身も人事データを活用することで、どんな価値を出せるのか見えてはいませんでした。そこで当時の問題意識に沿って、まず3つのアウトプット先を用意しましょうという方向性になったのです」(佐久間氏)

 こうした構造で開発に取り組んだことで、内製のいくつかの利点が見えてきた。1つは、使えそうなデータや重要なデータから優先的に着手することで、全部のデータがそろっていなくても活用を始められること。たとえば、評価データやエンゲージメントサーベイといった情報は利用頻度が高い。こうした情報から統合データベースに取り込み、スモールスタートで活用を始められるのは内製ならではだ。

 また、「システム全体のコストメリットもありました」と佐久間氏。人的資本開示の流れなどを受けて人事データ利活用の機運は高まっている。しかし、統合データベースを持たずに人事データを活用しようとすると、上図左のように分散したデータのまま扱うことになり手間がかかる。

 「統合データベースの構築・運用にもコストがかかるため、目的がデータ分析だけでは、コストを正当化しづらい側面があります。しかし、P/O-Karteの構築という目的が併せてあったため、そこをカバーしてくれました」(佐久間氏)

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この記事の著者

北浦 汐見(キタウラ シオミ)

都内のスタジオに勤務後独立。ポートレート、取材、料理撮影等、都内を中心に活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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