業務遂行性が高い状態で復職できる「リワーク」とは
吉田氏は「まず体調を治すのが最優先」としたうえで、特に適応障害では「復帰した後に、組織の中でどう働くか」を考えることが重要だとする。
そこで注目なのが、復職準備ができる「リワーク」だ。「return to work」の略語で、職場復帰に向けたリハビリテーションプログラムのこと。休職者が働いている時とほぼ同じ生活をし、実際に施設まで通所して復職に向けた支援を受けることで、業務遂行性が高い状態での復職が可能となる。
「適応障害はまだ治療法が世の中に浸透していないのが現状です。しっかりと治療できれば、もっと早く回復して活躍できる人は多いはず。リワークの認知度が高まってほしいと考えています」(吉田氏)
リワークには「医療」「福祉」「地方自治体」の3つの実施機関がある。利用方法や費用に差はあるものの、プログラム内容や会社との連携の有無は施設ごとに異なるため、導入を検討する際には施設を見学するのもおすすめだという。

自信を持って復職できるように!そのプログラム内容とは
プログラムは集団講義が多く、認知行動療法やマインドフルネス、ストレス耐性に関するものやコミュニケーションなど多岐にわたる。これに加えて、ベスリのリワークで特徴的なのは、「再発防止策」の作成と発表だ。
「たとえば、ベスリのリワークでは、20〜30ページほどのパワーポイント資料を作成します。そして、同様にリワークに通う人や講師の前で、『なぜ、自分がこのような体調になったのか』『どうすれば再発を防止できそうか』といった発表を行います」(吉田氏)

発表後には周囲からフィードバックを受ける。このフィードバックが大きなポイントなのだという。なぜか。
「ふだん、職場では自分の考えや行動に対して、面と向かって意見されることはなかなかありません。もし機嫌が悪そうにしていても、わざわざ同僚は指摘しませんよね。それに、万が一何かいわれると腹立たしかったり、うとましかったりするものです。
一方、リワークには自分と同じような状況の人が通っていますから、指摘されたときに素直に受け入れやすい。周囲だけでなく、自分の行動や考え方もメンタルヘルスの不調につながっていた可能性に気付けることで、復帰した後の参考になりやすいのです」(吉田氏)
こうしたポイントから、プログラムを受けて復帰した従業員がいる企業からは、「こんなに元気になるのか」「どうやって休職時の状況から変化させたのか」と驚きの声がよく上がるのだという。
「これまで、メンタルヘルスの不調では『なんとなく、症状が出なくなってきたから復帰できるかも』と職場に戻るケースも多かったのではないでしょうか。反対にベスリのプログラムは、グループディスカッションやフィードバックを通して不調の原因をしっかり分析します。それによって、根拠や自信を持って復職できるのです」(吉田氏)
実際、リワークの効果はデータでも確認できる。吉田氏によると、リワーク経由で復帰し、半年後も休職せずに働き続けている人は9割程度。ベスリのリワークにいたっては100%だという。