新卒・中途それぞれに体系的なオンボーディングを
——外川さんは2020年にプラスアルファ・コンサルティング(以下、PAC)に入社されるまで、富士通やGAPなど、幅広い業種・業態の企業で人事をご経験されてきたとのこと。PACに入った当時のオンボーディング施策について、どのようにご覧になりましたか。
入社当時のオンボーディング施策を見ると、「中途入社者(以下、中途)と比べて、新卒入社者(以下、新卒)のケアが手厚い」状態でした。これは、新卒はスタートラインがみんな同じで育成しやすいため、どこの会社も同じような傾向があるかと思います。
とはいえ、せっかくご縁があってPACの仲間になったのは、新卒も中途も同じ。加えて、社長からは「新入社員の“早期戦力化”に力を入れよう」というメッセージが全社に伝えられたタイミングでもありました。そのため、中途向けのオンボーディング施策にもしっかりと取り組んでいきたいと考えました。

外川 久美子(とがわ くみこ)氏
株式会社プラスアルファ・コンサルティング 執行役員 コーポレートストラテジー本部 副本部長 人事総務部 部長
富士通で人事のキャリアをスタートし、大手・外資・ベンチャーなどさまざまな業種業態で人事を経験し、2020年6月プラスアルファ・コンサルティングへ入社。2022年、執行役員就任。現在は、人事・総務の統括責任者として従事するほか、豊富な人事経験を生かし、タレントパレットの新機能企画から科学的人事の普及活動まで、人的資本経営の最前線で積極的な活動を行っている。
——社長が目指した“早期戦力化”とは、「入社直後から独り立ちして仕事をしてほしい」という意味なのでしょうか。
いえいえ、そんな劇的な成長を求めているわけではありません。仕事はゆっくり覚えてもらってよいのです。
ただ、「どこまでできるようになれば、独り立ちしたといえるのか」「独り立ちするために、何をしていけばよいのか」といったところを曖昧なままにしておくのは、新しく入社した本人にとってはもちろん、その上司や人事にとっても、望ましくない状態だと考えました。
早期戦力化という言葉には、「体系立てたオンボーディング施策を設計して、新入社員が安心して成長できる環境を整えましょう」というメッセージだと理解しています。
——ちなみに、毎年どのくらいの新卒・中途が入社されるのですか。
新卒は23~25名ほど。中途は40~50名ほどが入社しています。
新卒は「他職種ローテーション研修」で社内に相談しやすい関係性づくりを
——なるほど。では、まずは新卒向けのオンボーディング施策について教えてください。
前提として、新卒向けのオンボーディング施策で目指す状態は、「会社に居場所をつくる」「他職種の『人』と『仕事』を知る」「本配属先での業務を知る」の3つです。これらを実現するための主な施策を2つご紹介します。

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1つ目は、入社から9ヵ月間、1人ひとりに「インストラクター」という呼称のメンターをつけています。最初の月は毎日のように面談を実施していますね。
2つ目は、「他職種ローテーション」研修です。当社は総合職採用なのですが、入社前には職種が決まっています。しかし、5~6月、7~8月は、本配属とは異なる部署に配属される仕組みです。たとえば、営業職で入社したら、5~6月は開発部門へ、7~8月はコンサル部門へ配属となって、9月に本配属の営業部門へ戻ります。
——他職種ローテーションはなぜ行っているのですか。
当社には「PACサイクル」という考え方があります。営業とコンサルタントは顧客のニーズを開発に伝え、開発はそのニーズから新機能や新しい視点を生み出す。そして、その新しい価値を営業とコンサルタントが顧客へ案内し、顧客の声を開発にフィードバックする。このような部署や職種をまたいだ密なコミュニケーションをとても大事にしている**のです。
しかし、入ったばかりだと、他の部門にどんな人がいて、何をしているのかが分からず、連携しようがない状態です。
そこで、本配属で業務をはじめる前に、他職種の仕事を知り、異なるグループの人たちとも相談しやすい関係性をつくっておけるよう、他職種ローテーション研修を実施しています。

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