採用ペルソナの設計:「誰に伝えるか」を言語化する
採用広報の出発点は、「どんな人に応募してほしいか」を具体化することです。ここが曖昧なままでは、どれだけ良質なコンテンツをつくってもターゲットには届きません。
たとえば、「若手を採用したい」という要望があったとしても、“若手”とひとくくりにすることはできません。都市部で総合職を志望する人と、地方出身でUターンを希望する営業経験者とでは、価値観やキャリア観はまったく異なり、情報の刺さり方が違います。
そこで有効なのが「ストーリーベースのペルソナシート」です。単なる属性の羅列ではなく、架空の求職者を1人の人物として描くことで、ターゲットの内面や行動導線を想像しやすくなります。下記はその一例です。

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このように、想定人物像(ペルソナ)を「1人の“物語”」として描くことで、「誰に届けるのか」を具体的にイメージできるようになります。
そして、このシートを経営陣や現場責任者と共有することで、全員が「この人に来てほしい」と合意でき、コンテンツの方向性に自然と一貫性が生まれるのです。
情報ニーズを把握する:「何を伝えるか」を掘り下げる
採用広報では、「自社の魅力を伝える」のではなく、「相手が知りたい情報を提供する」という視点の転換が重要です。
そのためには、既存社員や候補者の声を通じて、情報ニーズを把握する作業が不可欠です。有効な手法として、次のようなヒアリングや簡易アンケートがあります。
社員ヒアリングの例(入社3年以内対象)
- 入社前にどんな情報があったら安心できたか?
- 応募の決め手になった要素は?
- 面接前に不安だったことは?
- 入社後に感じたギャップは?
内定辞退者アンケートの例
- 他社に決めた理由は?
- 比較検討したときに足りなかったと感じた情報は?
- 発信情報と実際の印象で、ズレを感じた部分は?
ここで重要なのは、回答を「何人が言っていたか」と単なる数字で捉えず、「どんな言葉で語られていたか」に注目することです。
たとえば、「オフィスの雰囲気が静かで、思っていたより個人主義だった」「チームワークが強いと聞いていたが、業務は個人作業が多かった」など、語られる言葉の選び方には、その人の本音や感情が表れます。そこに、改善や発信のヒントが眠っています。
また、Slackや社内チャットの自然なやりとりも、社風や空気感を象徴する生のデータ(ストック型情報)として分析・活用する価値があるでしょう。