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対談《人事法令》| 労基法改正の戦略的な活用

労働基準法大改正 対談【前編】——働き方改革を超える人事戦略の転換点、まず働き方の個別化へ舵を切れ

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 いま、働き方の前提が大きく変わろうとしている。2027年以降に予定される労働基準法の大改正は、単なるルール変更にとどまらない。分散型組織や副業・プロジェクト型の働き方と、旧来制度との“ねじれ”を正し、人材戦略を柔軟に設計し直すうえで避けて通れないテーマとなる。注目すべきは、この改正をどう事業戦略や人的資本経営に結び付けるのか——。EYストラテジー・アンド・コンサルティングの髙浪司氏と、産学連携シンクタンク iU組織研究機構 代表理事・社労士の松井勇策氏が、その本質を前後編にわたって語り合った。

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働き方改革を超える40年ぶりの大転換。なのに……

松井勇策氏(以下、松井) 労働基準法(以下、労基法)の改正については、法律系のWebサイトなどで一部情報が出ていますが、「企業はこの改正を人事戦略の転換点としてどう捉えるべきか」といった視点で語られる論考は、まだほとんど見かけませんね

髙浪司氏(以下、髙浪) おっしゃるとおりです。2019年の「働き方改革」では、時間外労働の上限が月45時間・年360時間など、時間外労働の上限規制といった数値基準が明確に示されたこともあり、企業も一斉に人事施策の見直し等の対応をせざるを得ませんでした。

 しかし、今回の労基法改正については、それ以上に大きな制度転換を含んでいるにもかかわらず、企業さまからの相談はかなり少ない印象です。背景には、議論が裁量労働制の見直しや在宅勤務の新たなみなし労働時間制、副業・兼業の通算管理など、複数の論点に分かれて進んでいるため、「全体像」が見えにくいことがあります。ただ、これは40年ぶりの制度刷新であり、人的資本経営や情報開示とも連動するため、企業にとっては戦略上の分岐点になります。

髙浪 司氏

髙浪 司(たかなみ つかさ)氏

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ピープル・コンサルティング アソシエートパートナー

外資系コンサルティングファームにて、会計領域のコンサルティングや、組織再編・事業統合に伴う事業モデル設計に従事し、大規模な業務改革・構想策定を得意とする。現職のEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社では、人事戦略を起点としたグローバル・ビジネス・サービスの変革を推進。業務の高度化・効率化を通じて、デジタルシフトに伴うワークフォース変容に対応し、次世代型の人事機能・人事オペレーティングモデルの構築や、スキルベースアプローチの導入によるタレントマネジメントの進化に注力している。

松井 その違いには、政治的な見せ方も関係しているかもしれません。先の働き方改革は安倍内閣の目玉政策として打ち出され、首相自らが積極的に発信していたこともあり、メディアでの露出や注目度も高かった。

 一方で、今度の労基法改正は表立ったメッセージが少ないものの、抜本的で非常に大きな改正であり、働き方改革関連法における改正などを上回る「40年に一度の大改正」だと呼ばれています。かつ、個別の制度よりも、根本にある「何のための改正か」という趣旨を捉える必要があることも重要な点です。検討中のものも含む全部の制度が「働き方をより自由に、フレキシブルなものにする」方向性を持っているように思います。

髙浪 確かに今回の改正では、これまでの労務管理の前提そのものを組み替えるようなテーマが多く含まれています。たとえば「事業」概念の再定義は、誰を労働者代表とするか、どの範囲で36協定を締結するかといった実務設計に直結します。欧州では勤務間インターバルや“つながらない権利”が制度化されていますが、日本も働き方の多様化を背景に同様の議論が進行中です。企業は制度変更を受け身で待つのではなく、「自社はどんな働き方を設計するか」を主体的に描き直す必要があります。

松井 はい。制度的な観点で言いますと、お話しいただいた内容を含んだうえで、特に注目すべきなのは、2017年の「働き方改革」と、2022年以降に進んできた「人的資本経営」という、2つの大きな政策潮流が、今度の労基法改正を通じて初めて重なり合い、統合されようとしていると考えられる点です。

 とはいえ、現時点では人事部長やCHROの方々からも「聞いたことはあるが、内容は詳しく知らない」という声が多く、企業側の理解がまだ追い付いていないのが実情です。

松井 勇策氏

松井 勇策(まつい ゆうさく)氏

産学連携シンクタンク iU組織研究機構 代表理事・社労士

雇用系の産学連携シンクタンクの代表理事・社労士。先進的な雇用環境 整備について、特に雇用系の国内法や政策への知見を軸に、人的資本経営の推進・AIやIT・ブランディング関係の知見を融合した支援を最も得意とする。株式会社リクルート出身、同社の東証一部上場時には事業部サイドの監査や整備を推進。退職後に社労士・組織コンサルタントとして独立、のち情報経営イノベーション専門職大学(iU)に客員教授として招へい(専門:人的資本経営・雇用政策)、2024年産学連携シンクタンク設立。

髙浪 ですが、2026年4月以降に国会提出が見込まれており、可決されれば2027年以降の施行(段階的なものも含む)が想定されます。そうなればメディアでも取り上げられ、注目度が一気に高まる可能性はあります。

松井 そうですね。ただ私が懸念しているのは、法案が個別論点ごとに分かれて審議されると、改正全体の思想や構造が見えづらくなることです。いわば“粒”のようにバラバラのルール変更として矮小化されかねない。これは非常にもったいないことです。

 今度の労基法改正で最も注目すべきなのは「組織運営の前提」や「働き方の設計思想」自体を見直す内容になっている点です。だからこそ、ルールの細部を追うだけでなく、「この改正を、これからの働き方や人材戦略にどう活かすか」という視点で捉えることが、企業にとって極めて重要だと思います。

次のページ
「働く場」の設計そのものを見直す時期に来ている

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この記事の著者

丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 優子(ヤマダ ユウコ)

神奈川出身。新卒で百貨店内の旅行会社に就職。その後、大阪に拠点を移しさまざまな業界・職種を経験してきたが、プロジェクトベースの働き方に魅力を感じて2018年にフリーライターに転向。現在はビジネス系取材記事制作を軸に活動しながら、チームで商品企画・開発にも挑戦中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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