3. 要点解説
(1)内定について
採用内定通知は、労働契約の申し込みに対する承諾であるため、採用内定通知を会社が内定者に出すことにより、労働契約が成立したことになります。
また、一定の事由が生じれば、内定取り消しもありえるため、内定は、「解約権留保付き」という性格を有しています。
こうしたことから、内定は、始期付きかつ解約権留保付きの労働契約になります。
この考え方は判例で確立されており、大日本印刷事件(最高裁 昭和54年7月20日)において、以下のとおりに示されています。
本件採用内定通知のほかには、労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかったことを考慮するとき、上告人からの募集(申込みの誘引)に対し、被上告人が応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する上告人からの採用内定通知は、申込みに対する承諾であって、被上告人の本件誓約書の提出とあいまって、これにより、被上告人と上告人との間に、被上告人の就労の始期を昭和44年大学卒業直後とし、それまでの間、本件誓約書記載の五項目の採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解する。
今回も、「本件内定通知により、XとY社との間には、就労開始日を令和5年7月1日とする始期付労働契約(本件始期付契約)が成立したと解するのが相当である」と裁判所は判断しています。
(2)労働契約の変更について
以上のとおり、内定により労働契約が成立したので、次に、雇用期間を期間の定めのないものから、雇用期間を2ヵ月とする有期労働契約に労働契約を変更することができるか、判断しました。
まず、こうした雇用期間の変更は、賃金等の変更に比肩するような重要な労働条件の変更に当たるものと判断しました。
そのうえで、Xが有期雇用に切り替えることに関して本人に適切な検討をさせておらず、本件契約書の作成は、労働者の自由な意思に基づいていないと判断し、雇用期間の内容が有効に変更されたものとはいえないと判断しました。