「スコア重視型」と「状況改善重視型」はそもそも両取りできるのでは?
前回から「スコア重視か、状況改善重視か」という2つの方向性を紹介していましたが、ここまで読んだ多くの方は「両取りできるのでは?」と思ったのではないでしょうか。
実際、優良企業は両取りしています。
これら2つの方向性を相反するように説明したのには理由があります。エンゲージメントのハイスコアと状況改善の両取りを狙おうとするとより取り組みやすい、スコア目標の設定とその目標達成を中心にアクションがとられがちです。さらに、現在のスコアや目標値を対外開示し始めると、スコアを伸ばすことが経営目標にも入ってきてしまい、いつの間にか「スコア重視」に偏っていきます。そして、状況改善のために従業員の声を聴くことが大きく後退してしまいます。
エンゲージメント調査の活用において重要なのは、従業員が自社で長期間にわたって活躍してもらうことです。従業員の声を聴き、改善活動につなげていけば、おのずとスコアも良い状態になります。
筆者は、本質的な状況改善のためにエンゲージメント調査が活用できていれば、エンゲージメントスコアを外部開示することや、市場ベンチマークより良いスコアを取ることは重視しなくてもよいと思うのですが、「投資家はスコア開示を求めている。スコアが高いと優良企業と見なされる」なんて言われてしまうと、対外アピールに力を入れたくなるのも理解できます。ただし、両取りしたいという場合であっても、状況改善のための活動を重視し、その結果としてスコアが高くなる、というたどり方で取り組んでいただくことが望ましいです。
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今回は2回にわたって、従業員エンゲージメントについて扱いました。人的資本経営などのトレンドにより、従業員エンゲージメントが経営レベルで注目されるようになったのは良いことですが、スコアの開示やその向上をアピールすることに偏りがちな例を見ることが多かったため、あえて「スコア重視型」と「状況改善重視型」の対比でエンゲージメント調査の活用方法を紹介しました。HRモダナイゼーション推進の参考にしていただけると幸いです。

