なぜ「主観」が大事なのか
人事データ分析というと、勤怠や評価、残業時間といった「客観的なデータ」が重宝されがちです。一方で、従業員の主観はあいまいで、その時々の気分によっても変化するため、分析の優先順位が下がってしまうケースも見受けられます。
しかし実際の組織では、パフォーマンス低下やトラブルの多くが「ひと」起因で生じており、その変化は本人の“感じ方”から現れることが少なくありません。「最近しんどい」「やりがいを感じない」「周囲と噛み合っていない」といった感情の揺れは、残業時間の増加や、休職・離職といった結果が表れるよりも前に起きています。
それにもかかわらず、人事やマネジメントがその兆候に気づくのは、実際の行動の変化がデータに表れてから、あるいは本人からの相談があってから、というケースが多いのが実情です。つまり「数字として可視化された後」に初めて対処している状態です。これでは早期対応とはいえず、結果として手遅れになるケースも生じます。
ここで重要なのは、起こっている事象について「事実がどうか」ではなく、「本人がどう感じているか」に目を向けることです。たとえ業務量が客観的には適正であっても、本人が過度な負荷を感じていれば、その人にとっては“負荷が高い状態”です。主観にはその時々の気分や体調による揺らぎが含まれますが、無視できる情報ではありません。むしろ、こうした「主観の揺れ」こそが、最も早く現れるコンディション変化の兆候となります。
こうした行動にはまだ現れていない変化を扱えるのが「パルスサーベイ」です。パルスサーベイは正確無比な分析を行うことが目的ではありません。「いつもと違う」という変化に気づくための機能として位置付けることが重要です。従業員の声を丁寧に拾うというよりも、組織としてパフォーマンス阻害の“兆しを見逃さない仕組み”をつくる——そのための手段として、パルスサーベイを捉える必要があります。

