政策スケジュールは「2026年夏」が1つの節目
企業実務の観点から押さえておくべきスケジュールは、次のとおりです。
2026年4〜5月には、日本成長戦略会議・労働市場改革分科会の論点整理が進みます。6〜7月には規制改革推進会議の最終答申が予定されており、2026年夏には「日本成長戦略」が骨太の方針と合わせて閣議決定される見通しです。ここで、労基法改正を含む雇用政策全体の方向性が明確化してきます。ここまではほぼ確定しているとみてよいスケジュールです。
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その後については筆者の予測ですが、労基法改正などは労働法制となるので、2026年秋以降の労働政策審議会などで具体的な法制化議論が行われ、その後に国会での法案提出・成立、そしてその後の施行準備期間を経て、2027〜2028年くらいに改正労基法が施行されると考えられるのではないでしょうか。
つまり、2026年夏までに政策の大枠が固まり、それ以降は「企業がどう対応するか」の局面に移行します。改正法の確定時点で慌てて動くのではなく、2026年夏の閣議決定前後から自社の人事戦略と接続させて準備を進めることが合理的であり必須ともいえます。
AI政策と雇用政策が同じテーブルに載った
この半年で最も重要な構造変化は、AI政策と雇用政策が政策レベルで一体化して動いているという事実です。
日本成長戦略会議の2層構造とAI基本計画
日本成長戦略会議は、17の戦略分野(筆頭がAI・半導体)と8つの横断課題(その1つが労働市場改革)という2層構造で設計されています。同一フレームワーク内でAI政策と労働政策が同時に進行する構造です。
2025年12月に閣議決定されたAI基本計画の第4方針「AI社会に向けた継続的変革」は、技術論ではなく社会設計論です。AI社会を生き抜く「人間力」の向上、人とAIの役割分担の模索、AI活用を前提とした働き方の変革を掲げ、「AI時代にふさわしい働き方の方向性を検討する」が内閣府・厚労省の共管事項として明記されています。
経済産業省2040年推計が突きつける「質のミスマッチ」
労働市場改革分科会で正式に提示された経済産業省「2040年就業構造推計(改訂版)」は、議論の前提を根本から変えたといえます。
結論は明快であり、「全体としての大規模な人手不足は生じない。ただし、職種間の深刻なミスマッチが発生する。事務職に約437万人の余剰が生じる一方、AI・ロボット利活用人材は約340万人、現場人材は約260万人、専門職は約181万人が不足する」です。
この推計のインパクトは、「AI協働で労働人口は不足しない」「量ではなく質の問題」という劇的な結論と認識転換にあります。AIが事務型業務の余剰を生み、一方でAIを実装・運用する人材とAIでは代替できない現場人材が深刻に不足する。リスキリングと労働移動は「あれば望ましい」ではなく「成長の必須条件」となります。
なお、リクルートワークス研究所の2023年発表の研究レポートなどの民間予測には、2040年に労働力が1000万人規模で不足するとの見方もありました。なんと、労働力不足の推計に経済産業省のレポートと1000万人以上の差があります。
筆者はその他のものも含む、さまざまな雇用関連レポートの推論の差異を精緻に分析しましたが、最大の相違はAI活用による労働需要の質的変化の織り込み方にあるのではないかと考えています。いずれにせよ、「質のミスマッチ」が最大の課題であるという点で両者の指し示す方向は同じです。

