おわりに——コンプライアンスから世界観創造へ
労基法改正の議論が始まった当初から、筆者は繰り返し「これはコンプライアンスの話ではなく、人材戦略の話だ」と発信してきました。この主張はいっそう明確な形で政策に現れてきているように思います。
日本成長戦略会議の論点整理資料に人材版伊藤レポート2.0が正式に組み込まれ、AI基本計画が雇用と人間力を正面から論じ、2040年の就業構造の激変が政策の前提として共有されている。雇用・労働・人材に関する法令政策は、もはや守るための制度ではなく、企業と社会が未来を設計するための戦略ツールになっているのが明確だと思います。
2017年の働き方改革から2022年の人的資本経営、そして2027年の労基法大改正へ。10年にわたる3段階の改革は、「全員が一律に量を投入する」雇用モデルから、「多様な人材が質の高い働き方を自律的に選択する」モデルへの転換を制度の側から迫るものです。その転換を自社の言葉で語れるかどうか。「世界観」を持てるかどうか。そこに、この激変を企業価値向上の転換点に変えられるかの分岐点があります。
本稿は、労基法大改正の論点の広がりに対応し、多くの内容を含むものとなりました。今後、派生する各論もさまざまにお伝えできればと思いますが、この情報が、今後の働き方の変革へ少しでもお役に立てば幸いです。

