経営者が「会社の風通し」の悪さに気づけない理由
会議で本音は出ない。現場の問題は上に届かない。隣の部署が何をしているか分からない。「会社の風通しが悪い」──現場から上がってくるこの言葉、人事担当者なら何度も聞いてきたのではないでしょうか。
私は風通しの正体を「声」と捉え直しています。声が組織の中を巡っているか、いないか。風通しの良し悪しはここで決まります。
「無知の氷山(Iceberg of Ignorance)」と呼ばれる調査があります。1989年に発表されて以降、組織論で繰り返し参照されてきました。現場の問題を一般社員は100%認識している一方、経営層に届くのはわずか4%にすぎない──そんな調査結果です。残りの96%は、現場から管理職、管理職から部長、部長から役員へと上がるたびに削られ、最後には「特に問題ありません」という報告に変わっていきます。
経営者が「うちは風通しがいい」と感じているとき、その手元に届いている情報は、すでに何重にも“ろ過”された後のものです。届いていない96%の中にこそ、組織の不調を知らせるサインが含まれている。これが、本連載で扱う「沈黙の組織」の出発点です。
「沈黙の組織」をつくった張本人は、私自身でした
2011年10月、私は外資系IT企業であるコンカー日本法人の初代社長に就任しました。経営の経験はまったくありません。事業の立ち上げも、組織づくりも、文字どおりゼロからのスタートです。
本社からは絶えず成果を求められる立場です。「早く結果を出さなければ」と焦るあまり、ひたすら目の前の数字だけを追いかけました。組織づくりは後回し。即戦力が欲しいばかりに、文化や価値観の合わない人材を採用し続けました。
ある日、一通のメールが、私を採用してくれた直属の上司である、米国本社のマイク・エバーハードの元に届きます。差出人は、コンカー日本法人の社員でした。
「あの人が社長を続けるなら、日本進出は失敗する。替えたほうがいい」
私に直接進言することを、その社員は諦めていたのです。
会議室では誰も口を開かない。会議室を出た途端、「三村は現場をわかっていない」という声が漏れ聞こえる。社員は自分の机の上の仕事だけを片づけて帰る。自分の業務の「半径5メートル」しか見ていない組織が、そこにありました。
現場の声は経営に届かず、私の考えも現場には届かない。気がつけば、会社を良くしようと声を上げる人は、もういませんでした。
恥ずかしながら、この沈黙の組織をつくった張本人は、私自身です。
ただ、ここから組織を立て直した道のりもまた、私自身が歩いてきたものです。 何が組織を沈黙させていたのか。そして、どうすれば声を取り戻せるのか。 失敗の渦中で考え続けた問いが、「フィードバック経営」の出発点になりました。

