変わる「AIと人事の関係」 定型業務をAI化した先の世界とは
続くテーマは、「AIの進化にともない、⼈事はどう変わったか/変わるべきか」である。松澤氏は、各社の人事領域におけるAI活用や変化について問いかけた。
松澤 勝充(まつざわ まさみつ)氏
株式会社Every 代表取締役CEO
神奈川県出⾝1986年⽣まれ。⻘⼭学院⼤学卒業後、2009年(株)トライアンフへ⼊社。リクルーターとして総合商社への出向などの経験を経て、2016年より、最年少執⾏役員として営業・マーケティング・採⽤の3部⾨を管轄し、5年間で約300%の売上拡⼤、6倍の組織規模成⻑を経験する。2018年8⽉渡⽶留学、UC BerkeleyでHRを学ぶ機会に恵まれる。帰国後2020年4⽉1⽇に株式会社Everyを設⽴し、6⽉1⽇から事業を開始。グローバルHR資格(SHRM-SCP・CPTD・SPHRi・GPHR)の保有者。
江崎グリコでは前述した3段階のうち、第1段階である定型業務の一部がAIに置き換わりつつあるステップだという。
「オペレーティブな業務はAIに代わってきています。一方で、置き換わった分のリソースを他に配分できているかというと、マインドセットや個人のケイパビリティもまだそこまで変革できておらず、プロセスとしてもまだまだ及んでいないのが現状です」(髙橋氏)
それを受けて河本氏は、人事がより現場に寄り添う必要性を強調した。採用における履歴書チェックやAI面接など、置き換え可能な業務は効率化が進む一方で、新たなチャレンジとして、自分の仕事の業務管理をAIとともに行い、自分のやっている仕事が本当に効率的なのかを見ていく取り組みを始めているという。
「そうでもしないとなかなかAIを使い始めないですし、やってみると結構おもしろい。これが進んでいくと、人事は対面で改善を促す個別の仕事になっていき、ヘッドクォーター的な仕事のスタンスでは通じなくなっていく。そのためにも人事はもっと現場を知っていないといけないと思っています」(河本氏)
林氏は、AIが人事にもたらす大きな変化として「評価の定義」を挙げた。これまでは、売上や勤怠、労働時間などの定量データに加え、上司の印象や暗黙知を含めて評価してきた。しかしAIによって、成果に至るプロセス、コミュニケーションのスタイル、マネジメントの癖など、これまで測れなかったものがデータ化されるようになる。
「今まで測れなかったものが測れるようになることは良いことですが、それをどう評価するかという別の問いが出てきます。評価の定義が各社の大きなポイントになるでしょう」(林氏)
林氏は、AIに代替された業務は評価する必要がなくなり、課題を先に発見して仮説を立て、アクションを取れる人を評価しなくてはいけなくなると指摘。一方で、その評価軸を自分たちはまだ持っていないため、これから探す必要があると強調した。
「また、人事の説明責任もより重要になります。AIによって多くの情報が可視化されるからこそ、なぜその評価なのか、なぜその配置なのかといった説明に責を負う必要があるでしょう」(林氏)
曽山氏は、人事とAIの関係を「作業のAI化」「データのAI化」「経営判断のAI化」の3ステップで整理した。
サイバーエージェントでは、人事本部に人事システム室を設け、まずはルーティン作業のAI化を進めている。たとえば、地方自治体ごとにフォーマットが異なり、手作業での対応が大きな負担になっていた就労証明書の発行業務をAI化したという。
「今まで数百件出さなければならない証明書を、全部手作業で対応していました。それを、ついこの間、人事部とAIチームでようやくAI化できたんです。依頼があれば数分で出せる。これも僕らからすると革命です」(曽山氏)
次の段階となるデータのAI化については、人事データが複数のシステムに分かれていることや、個人情報の管理などの難しさがあるという。
その先にある経営判断のAI化では、AIが意思決定そのものを担うというより、意思決定の選択肢を増やす役割を果たすと曽山氏は見る。人間は選択肢が少ないことで判断を誤りやすい。AIに「ほかに案はないか」と問い続けることで、判断の質を高められる可能性があると述べた。

