登壇者
- 長瀬慶重氏(株式会社サイバーエージェント 執行役員/株式会社AbemaTV 開発本部長)
- 梶原大輔氏(株式会社エブリー 取締役CTO 兼 ライフスタイルカンパニー長)
- 石川智博氏(アカマイ・テクノロジーズ合同会社 サービス統括本部 統括本部長)
- 植村保彦氏(ブロードメディア・テクノロジーズ株式会社 取締役副社長)※モデレーター
売り手市場のエンジニア採用――各社が用いる手法とは?
植村保彦氏(以下、植村):本日はお集まりいただきありがとうございます。最初のテーマとして、現在の売り手市場におけるエンジニア採用についてうかがっていきたいと思います。リクルートキャリアの情報によると、ITエンジニアの求人倍率はインターネット専門職の場合5.82倍で、非常に高い状況です。このような時勢の中、皆さんはどのように採用と向き合っていらっしゃるのでしょうか。
長瀬慶重氏(以下、長瀬):採用に関して社内メンバーと共有しているのは、「採用は恋愛のようなもの」という考え方です。恋愛をするかのように、人生を決めるために必要な情報を引き出すことを意識していますね。母集団形成に関してはあらゆる採用手法を採り入れていますが、特に力を入れているのは広報の打ち出し方です。例えば学生に向けては、1~2年目のエンジニアがどんな風に活躍しているのかという部分を、自社・他社メディア、リアルイベントで積極的に発信しています。
梶原大輔氏(以下、梶原):スタートアップ企業の場合だと、採用エージェントにフィー(料金)を支払うのも大変な状況ということがあるので、自分たちで手軽に採用活動ができる媒体を使う例が一番多いですね。最近はWantedlyで記事ランキングを上げて閲覧者を増やしていこうという取り組みや、イベント開催も盛んです。欲しい人材は直接誘って会社の魅力を伝えることもあります。「会社の知名度がない中で、どう人材獲得するのか」という部分が勝負ですね。
石川智博氏(以下、石川):アカマイは逆に、スタートアップの時代からエージェントを積極的に使って採用を進めてきました。ただ、ピンポイントで欲しいスキルを持っている人材を探すには、ある程度ダイレクトソーシングやソーシャルメディアを使う必要がありましたね。現在はリファラルで人を紹介していただいて採用するという形が、一番確実な手法になっています。最近はアカマイという会社について、事前に理解を深めてもらうためのイベントをもっと行うべきだと感じています。
経営会議に出てもらうのも良策――自社の魅力をダイレクトに伝えるためのアピール方法
植村:各社とも、多岐にわたる採用手法を採りつつ、リファラルやSNSを活用して活動されているんですね。長瀬さんにうかがいたいのですが、今、最も多い採用ルートは何でしょうか。
長瀬:AI系の技術者ならエージェント経由、Webの技術者ならリファラルやダイレクトが多いなど、職種ごとの傾向は明確にあると感じています。ただ最近は、とにかくリファラルかダイレクトで各社が人材を取り合う“地上戦”を繰り広げている印象ですね。そんな中では、「トップが採用にコミットする」ということが非常に重要で、例えば僕の場合、Wantedlyのレジュメ300~400人分を全部見て、僕自身がオファーしています。そして直接会って食事をして、1年かけて口説く。トップクラスの技術者を引き込むには、とにかく時間をかけて一人ひとり丁寧に口説くことが大事なんです。決め打ちで採用する確率を上げるために、各社でもトップ層がかなり採用にコミットしている印象です。
植村:そういった傾向のなかで、自社の中で「この部分だけは特に力を入れている」または「アピールできるものを作り上げている」という部分はありますか。石川さん、いかがでしょう。
石川:新しいものへの取り組みや挑戦も手厚くサポートする会社だという点は、もっと積極的に伝えられるようにしなければと思いますね。外資系のリモートオフィスで、しかも英語を使って仕事をする環境ですから、自分次第でどんなふうにでもキャリア形成できますし、会社側が成長機会も提供できます。
植村:なるほど。梶原さんはいかがでしょうか。多数のスタートアップベンチャー企業を支援されていた中で、人を惹きつけるための面白い活動にはどんなものがありましたか。
梶原:一番効果が高いのはイベント開催ですね。「ワールドカップサッカーをみんなで見よう!」といった、わいわい楽しむイベントをやったこともありました。その他にも、会社の状況を知ってもらうため、ある一定の基準を満たした人に関しては、経営会議に一度出てもらっているという会社もありますね。その会社がどういうところを目指していて、何に困っていて、どんな人を採りたいのか、というメッセージが会議を通してダイレクトに伝わるので、会社を理解してもらうには一番いい方法ですね。もちろん、会社の規模が大きくなればなるほど情報公開の問題で実施は難しくなりますから、スタートアップ企業ならではの戦い方です。