近年のAIブームを受け、ベンダーと概念実証(POC)を実施する企業が多く見られる一方で、AIに関して自身で運転することの必要性を理解したとしても、多くの企業はどこからスタートしてよいかわかっていない。
ガートナーはこれまで、どこからAIを勉強すればよいかと悩む顧客からの問い合わせに対して、AIを試行する機会を紹介し、すべてのケースで前向きな反応を得ており、こうした状況は今後も継続し、学習機会についても確実に周知が進むと見込まれることから、「2022年までに、60%以上の日本のユーザー企業のIT担当者は、無償のOSS(オープンソース・ソフトウェア)、オンライン講座、有益な書籍を利用することで、AIに関して『自分で運転』する基礎的なスキルを獲得する」と予測する。
AI、IoT、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、ブロックチェーンといった新たなテクノロジーが広がっている中で、そういったテクノロジーがもたらす大量の情報の中から、正しい情報を効率的に取得し、正しい判断を下して行動につなげる「人材の情報処理能力」が極めて重要になってくる。
しかし、IT部門がこうした能力に注目せず、従来どおりのスピードで情報収集・判断・行動を続けると、顧客満足度をすばやく高めるという社会のトレンドに遅れをとる恐れがあるとともに、顧客だけでなく社会の他部門からも信頼を失う恐れがある。そういったことから、ガートナーでは「2023年までに、人材の情報処理能力の改善に取り組まないIT部門の80%は、縮小戦略を取らざるを得なくなる」とも予測している。
ガートナーが2018年2月に実施した調査によれば、OSSに対する自社の取り組み方を変えた企業において「自社内での人材育成と、人材への投資を強めた」と回答した企業が39%ともっとも多くなった。また、「OSSのスキルを有する人材を雇用した」と回答した企業が、2017年と比較して6ポイント上昇の27.2%だったことが注目に値する。
各企業が求めるOSSプロフェッショナルは、詳細な人材像こそ企業によって異なるものの、今後は獲得競争が進むと考えられることから、ガートナーでは「2024年までに、人月単価をベースとしたプロジェクトを実施する企業の90%は、OSSプロフェッショナル人材の獲得に苦慮する」と予測している。
日本のベンダーやSIは、バイモーダルのモード1においてはクラウドによる将来のSIビジネスの破壊、モード2においてはユーザー企業の内製化によって収益増が期待できなくなることや、アジャイルによって現場が回らなくなったり、どのような契約を結ぶべきかが非常に難しくなったりする、といった課題を抱える。
こういった現状を受けて、ガートナーは「2022年までに、デジタルやモード2の推進に関して有効な対策を取れないシステム・インテグレーターの80%において、20~30代の優秀な若手エンジニアの離職が深刻な問題となる」と予測する。
ユーザー企業におけるIT部門の位置付けが、これまでの社内の従業員に対するITサービスの提供から、ITによる自社の顧客やパートナーを巻き込んだエコシステムの構築、およびサービスの提供へと変化してきたことや、モバイル、クラウド、IoT、AI、ロボティクスといったテクノロジーの進化や適用領域の拡大にともない、IT部門にかかる期待とIT部門が直面するチャレンジ領域が大きくなっている。
一方で、従来の業務に多くの時間や予算を取られ、現状では新たな領域へのチャレンジが困難なことから、ガートナーでは「2021年までに、国内のITベンダーから技術者を中途採用するユーザー企業は80%を超える」と予測する。
なお、ガートナーは4月23日~25日に「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス 2019」を八芳園本館(東京都港区)で開催し、「未来志向2030:新たな時代へ」をテーマに、昨今の状況と将来の方向を踏まえ、採るべき戦略、アクションとアドバイスの提示を行う。