リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所は、企業に勤務する一般社員と管理職1192名に「異動とキャリア開発に関する意識調査」を実施した。
近年、人事異動やキャリア開発の場面で、HRテクノロジーやHRアナリティクスの導入が進みつつある。これらは、人事異動やキャリア開発に関わる業務の効率性を高める、あるいは施策の効果を高めるために有効な取り組み。一方で、これらの取り組みは人事管理部門の視点から行われているもので、現場の社員や管理職の視点を取り込むことで、より良い施策にしていく余地があると考えられる。そこで、本調査を行い、異動への適応やキャリア開発に関する意識について明らかにした。
異動に関して、一般社員は管理職と比較して、肯定的な印象についての選択率が低く、否定的な印象についての選択率が高い。
異動がキャリア開発に有効だと感じた経験に関して、一般社員は「過去に経験がない分野の仕事に取り組んだこと」と「過去に接点のない人々と仕事に取り組んだこと」の選択率が高く、それぞれ3割を超えている。
「勤務地や勤務時間など、制約事項」や「上司と本人の相性(管理職とメンバーの相性)」など、異動にあたって「考慮してほしい」「把握したい」ということが、一般社員と管理職の双方にある。
一般社員は、長期的な視野でキャリア開発について検討する際に必要な情報に対し、異動先への適応のために必要な情報、すなわち短期で必要な情報を知ることへの関心が相対的に高い。
一般社員の「キャリアが実現できるか不安だ」という思いの強さと、「異動の際に条件や環境を考慮してほしい」という思いや「異動やキャリア開発の際に必要な情報を把握したい」という思いの強さとの間には相関関係がある。
同調査の結果について、リクルートマネジメントソリューションズ HR Analytics & Technology Lab所長の入江崇介氏は次のように述べている。
「異動について、キャリア開発の機会と結び付けられること、あるいはスムースに適応できることなど、異動対象者の経験の価値を高めることがこれまで以上に必要になると考えています。その際に有効なツールをうまく機能させるためには、情報の開示性を高めることや、社員や管理職にとって分かりやすい情報を提供すること、また情報を活用した対話の仕組みを整えることなどが求められると考えられます。その促進のために必要な知見について、今後も研究を進めていきたいと思います」(入江氏)