人事業務を1つのグループ企業に委託
伊藤秀也氏(以下、伊藤):鉄道や不動産など、社会の外部環境に対応して変化していく傾向の強い事業領域を手がけながら、むしろ東急は積極的に変化を創り出していく風土があるように見えます。
村上孔紀氏(以下、村上):当社はもともと鉄道を整備し、その沿線を開発して皆さんに住んでいただくというビジネスモデルで発展してきました。しかし、日本の少子高齢化が進む中で、沿線人口も徐々に減少しており、何か新しい手を打たないと成長していけません。社長もつねづね「サスティナブルな会社にしていかなくてはならない」と語っており、「東急、次の100年を創る。」をミッションに、イノベーティブな組織に変革する取り組みを、全社を挙げて進めています。
そうした取り組みの一つとして新たに立ち上げたのが、「フューチャー・デザイン・ラボ」と呼ばれる組織です。これは社長直結の部署になっていて、みずから新事業を創りたいと手を挙げて希望した若手を中心とする社員が、多く参画しているのも大きな特色です。
伊藤:若手の方の育成という側面もありそうですね。
村上:一番目立つところでは、2015年から始まった新規事業創出の「社内起業家育成制度」があります。社員が新しい事業のアイデアを提案して、社長が決裁したら会社が費用を出して事業化します。プロジェクトといっても、発案の時点では1人でも部署の異なるメンバーで組んで提案してもよく、形態はかなり自由です。それでフューチャー・デザイン・ラボで事業化するとなったら、その提案メンバーがラボに異動して起ち上げにかかります。
伊藤:人事に関する取り組みでいうと、シェアード化を行っていらっしゃいます。
村上:人事部門は、東急株式会社をはじめグループ会社の各社内にありますが、2000年初頭あたりからHR系のシステムを一貫したものに統一・標準化しようという方針の下でツールを導入してきました。その上で、グループ内の各企業の人事部門から業務を東急ファイナンスアンドアカウンティング(以下、TFA)に委託するというシェアード化を進めました。
シェアード化のねらいとしては、グループ全体での効率化と標準化はもちろんですが、法規に準じた給与計算などを担保するというコーポレートガバナンス面の強化もあります。小規模な会社だと法制度のひんぱんな変更に確実にキャッチアップするのが難しいため、グループで受託してコンプライアンスを確実にする効果もあります。現在グループ内の約40社・2万5000人分の給与計算や労務管理といった業務をTFAに委託しています。