パーソル総合研究所は、「テレワークによる組織の求心力への影響に関する調査結果」を発表した。同調査は、テレワークによる組織の求心力や生産性の低下が懸念される中、企業経営や人事に資する定量的なデータを提供することを目的に実施された。調査期間は2020年7月21日~26日で、テレワーカー1000名と出社者1000名から回答を得ている。
調査結果は以下のとおり。
①テレワーカーの組織への愛着
「会社に愛着を感じている」割合は、テレワーカーで34.4%、出社者で27.1%。「会社に対して感謝の気持ちを持っている」割合は、テレワーカーで43.4%、出社者で32.8%。「会社の一員として仕事をすることに誇りを持っている」割合は、テレワーカーで36.4%、出社者で28.2%。いずれの項目もテレワーカーのほうが出社者に比べて、組織コミットメント(組織との情緒的な結びつき)が約1.3倍強いという結果となった。
②テレワーカーの仕事の成果認識
「私は、上司からの期待を超えるパフォーマンスを発揮している」との回答割合は、テレワーカーで30.4%、出社者で22.1%と、約1.4倍の差がついた。また、「私は、担当業務の責任を果たしている」との回答割合は、テレワーカーで54.5%、出社者で46.4%。「私は、職場で任されたレベル以上の役割を果たしている」との回答割合は、テレワーカーで34.3%、出社者で27.8%となり、どちらも約1.2倍の差がついた。
さらに、テレワーカーと回答した人が属する企業では同僚の約7割、出社者と回答した人が属する企業では同僚の約1割がテレワークを実施しており、実施率に大きな差がある。そのため、同調査結果では、テレワークに積極的な企業と消極的な企業に見られる特徴が表れていると考えられる。
この結果について、パーソル総合研究所 研究員の青山茜氏は、以下のように述べている。
「なぜテレワーカーのほうが(組織コミットメントや仕事の成果認識が)高かったのか。まず考えられるのは、企業のテレワーク推進に伴う『従業員の健康への配慮』『企業方針や対応についての十分な説明や情報提供』などが、組織コミットメントを高めたということだ。実際、これらを実施している企業では、実施していない企業に比べて組織コミットメントが高い。これら以外にも、重回帰分析により、新型コロナに対応した企業の姿勢や施策は組織コミットメントに有意に影響していることもわかっている。
新型コロナ感染拡大が見られ、再びテレワーク実施を検討している企業もいると思うが、従業員の健康を第一に考え、不必要に出社しなくてよいという企業側の姿勢を明示すべきだ。曖昧な経営姿勢や現場に判断を委ねるような対応だと、実際にテレワークを行う割合も組織コミットメントも上がらない。はたらく場所がどこであれ、企業の対応次第で組織の求心力を保つことができることを念頭に、不要な出社を避け、テレワークを推進すべきだろう」(青山氏)