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人事労務事件簿 | #17

会社の労働時間管理不徹底により、社員の保存記録を出退社時刻として認定(東京地裁 平成23年9月9日)

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 従業員の労働時間を会社が把握することは常識的に思われていますが、そうではない経営者もいるようです。今回紹介するのは、会社の代表者がタイムカードの導入などを拒み、時間外手当の支払いも行おうとしなかったため、従業員の一人から訴えられたケースです。もし、自社の代表者がそのような姿勢でいるなら、労務担当者として、労働基準法にのっとった対応を説くべきでしょう。

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1. 事件の概要

 本件は、原告(以下「X」)が、被告(以下「A社」)に対し、未払時間外手当等を求めた事件です。

(1)当事者

 Xは、A社の元従業員で、平成19年7月23日から平成22年7月31日までA社との間で雇用契約関係にありました。

 A社は、各種書籍・雑誌の企画・編集(D社発行のパートワーク(週刊分冊百科)雑誌の編集・制作)を行うことを目的とした株式会社で、社員数約30名からなる編集プロダクションです。

(2)雇用契約の内容

 Xは、平成19年7月23日にA社との間で、期限の定めのない雇用契約(以下「本件雇用契約」)を締結しました。本件雇用契約の主な内容は次のとおりです。

  • ① 賃金(基本給):25万円(以下「本件基本給」)
  • ② 締日及び支払日:毎月20日締め、同月末日払い
  • ③ 所定労働時間 :午前10時30分から午後7時30分まで(うち1時間休憩)
  • ④ 所定休日   :週休2日制(土曜日および日曜日)、国民の休日、年末年始、夏季休暇
  • ⑤ 勤務地    :東京都文京区

(3)Xの勤務状況

 Xは、平成19年7月23日、A社に入社し、主に「Aタイムズ」、「Bコレクション」、「Cコレクション」など、株式会社Dから依頼される分冊百科シリーズの編集・制作を担当しました。

 平成21年8月からは、チームリーダーとして、「Bコレクション」の制作の統括を担当しました。

 Xの実情として、全体として仕事量が多く、所定の出退社時刻(始業午前10時30分、終業午後7時30分)を守っていたのでは、担当の業務を終えることは不可能な状況でした。

(4)A社の出退勤管理

 A社の代表者は、「締め切りまでに良い仕事さえすれば、勤務時間の使い方は自由で構わない」との考えを持っていました。

 このことから、従業員の出退社管理に全くといってよいほど関心がなく、就業規則はもとより、タイムカードや出社簿なども全く存在していませんでした。

(5)Xによる出退社記録の保存

 Xは、A社において全く出退社管理等が行われていないことに疑問を持ち、将来の残業代請求を視野に入れ、平成20年1月から、毎日、自らの出退社時刻を分単位まで手帳に記録するようになりました。

 ただし、Xは、これだけでは証拠として客観性に欠けるように思えました。

 そこでXは、「パソコンにファイルを保存すると、その時刻が自動的に記録される」という特性に着目しました。そして、同年7月頃から、手帳への記録に加え、出退社時ごとに、ソフト(LightWay)(以下「本件ソフト(LightWay)」)を立ち上げた上、A社から支給されたパソコン端末が管理する時計機能を利用して、その各出退社時刻を打刻し、これをパソコンのフォルダ内に保存する方法を採用しました。

 これによりXの各出退社時刻は、手帳だけでなく、本件ソフト(LightWay)による電磁的記録としても保存・記録されました。

(6)XとA社代表者の話し合い

①1回目

 Xは、依然、A社には就業規則を作成し、タイムカード等を設ける気配がうかがわれなかったことから、平成21年7月21日にA社代表者に対して話し合いを求めました。

 そして、Xが、タイムカードや就業規則の作成を求めたところ、A社代表者は、「面倒だから」と言ってこれを一蹴した上、「タイムカードを設けても打刻する従業員はいない」とか、「始業時刻(午前10時30分)に遅刻した場合には、キャバクラみたいに罰金をとることになる」などと言い張りました。

 これに対し、Xは、(タイムカードが設置されれば)「俺は押します……今、(自分の勤怠を)全部チェックしてるもん」であるとか、「罰金取るなら、残業代も請求しますね、俺は」などといって本件ソフト(LightWay)等の存在をほのめかしました。

 しかし、A社代表者は、「残業代とか出したら、会社成立しないからな。この業界、全部そうだから」などと言って、Xの上記要望を全く聞き入れようとしませんでした。

②2回目

 Xは、平成22年3月17日にも、A社代表者と面会し、タイムカードの設置を再度求め、「今のままでは残業代を請求されたら払わなければならない」などと説得を試みました。

 しかし、A社代表者は、「請求されたらね」などといって、Xの上記説得を真剣に受けとめようとはせず、「……今なんか、ある時期から極端に、労働者の権利ばっかりに……強くなってきちゃっているじゃん」などと不満を述べました。

 結局、タイムカードや就業規則の作成に応じる構えは、全く示しませんでした。

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この記事の著者

坂本 直紀(サカモト ナオキ)

人事コンサルタント、特定社会保険労務士、中小企業診断士、坂本直紀社会保険労務士代表社員。就業規則作成・改訂、賃金制度構築、メンタルヘルス・ハラスメント対策社内研修などを実施し、会社および社員の活力と安心のサポートを理念として、コンサルティングを行う。 ホームページに多数の人事労務管理に関する情報、規定例、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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