健康経営の見える化を支援する2つの新機能
次に、健康経営の推進に向けて、昨今Health Data Bankに搭載された2つの機能を紹介したい。
1つ目は、第一生命保険株式会社との共同開発によって生まれた「企業健診レポート」だ。Health Data Bankで管理している健診データを分析し、組織としての健康状態や、循環器系疾患の発症リスク予測、BMI・血圧・血糖値に基づく優良者の判定結果などをレポートとして出力する。レポートは企業単位だけでなく、部署単位で出力することも可能だ。
また、この企業健診レポートを第一生命に提出すると、優良者の占有率などが一定の条件を満たす場合に、保険料が割引される団体保険に加入することもできる。
「健康管理部門の業務は、なかなか成果として見えづらい課題があった。『社員の平均血圧が2下がった』と言われても、正直、経営者にはピンと来ない。このレポートを活用することで、『健康管理をした結果、保険料をいくら下げられた』と、健康管理部門の手柄にしていただけたら」(畠山氏)
2つ目は、NTT研究所のAI技術を活用した「疾病リスク予測分析」だ。健診データに基づき、糖尿病・高血圧症・脂質異常症の3つの生活習慣病に関する発症リスクを予測し、企業の将来損失を見える化する。これを健康投資の実施前後で比較することにより、投資対効果の評価に役立てられる。
このように、時代の変化に応じて進化を続けているHealth Data Bankは、25人の小規模企業から45万人の大企業まで、幅広い規模の企業で導入されており、クラウド型従業員健康管理システムのシェア70.4%[1]を誇るという。Health Data Bankを活用することで、健康経営優良法人認定基準の大半の項目をクリアできるだけでなく、今後、法改正があったとしても無償で対応してくれるのは、クラウド型ならではの特長だ。2021年度の健康経営銘柄に選定された企業のうち10社がHealth Data Bankを導入している。
では、健康経営を推進するために、具体的にデータをどのように活用すればよいのだろうか。畠山氏はデータの活用事例として、次の2つを紹介した。
- KPIの設定
- Health Data Bankに登録された健診結果・問診票・アンケート結果などから課題を抽出し、「健康診断受診率・健診後精密検査受診率・喫煙率・運動習慣率・ストレスチェック実施率・高ストレス者率」といった独自のKPIを設定。健康施策の実施後、施策参加者へのアンケート実施や、健診結果の改善度合いを確認するなど効果検証を行い、次年度の目標設定や施策立案、計画の見直しに役立てている。
- 若年層肥満対策
- 40歳未満の若年層を対象に、適正体重を目指す対策を実施している。Health Data Bankで管理している人事データや健診結果をもとに、適正体重(BMI)ではない従業員を抽出して、対象者を決定。3ヵ月間の健康施策を実施した後、1ヵ月ごとに対象者と面談を行い、取り組み状況を確認。面談結果はHealth Data Bankの「面接記録」機能に入力し、抽出・管理・集計ができるようにしている。また、翌年度の健診結果が芳しくなかった従業員には、面談や新たな健康施策への参加依頼を行うなど、継続的なフォローを行っている。
「一般的な健康管理システムでは、医療機関ごとに異なる健診結果のフォーマットから、システムで規定された形式へと、データを変換して入力する手間がかかる。人事労務担当者や医療スタッフなど、健康管理業務に携わる有資格者の方々が、このような作業に時間を割くのはもったいない。Health Data Bankでは、医療機関から送付される健診データの受領と、そのデータの変換・入力作業をNTTデータで行うため、お客様は従業員のアフターフォローに専念していただける」(畠山氏)
注
[1]: 富士経済「ヘルステック&健康ソリューション関連市場の現状と将来展望2019」 従業員健康管理システム、企業シェア、数量ベース、2017年実績