「30%の事業成長」を実現する人材組織づくりがCHROとしてのミッション
岡本勇一氏(以下、岡本) 伊藤さんは、2021年9月よりクラウドワークスにジョインしてわずか4ヵ月後の2022年1月に、新設された執行役員 兼 CHRO(最高人事責任者)に就任されました。これまで、外資系ヘッジファンドに20年以上在籍され、投資家として活躍してきた伊藤さんが、これまでのキャリアとはまったく異なる業界で、しかも人事に取り組まれるということで、驚いた方も多いでしょう。しかし、人事畑でなく事業側に長くいらした方がどのように人事を変えていくのか、大変興味深く思っています。
伊藤潤一氏(以下、伊藤) CHROになってまだ3ヵ月ほどなので、確かに人事関係の方にとっては、私は異端に見えるかもしれません。そして、ベンチャーは決して洗練された組織とはいえず、足りないものを探すのではなく、あるものをどう上手く効率的に使うかということが大切です。その目線で自分自身を合わせることから始めているところです。
岡本 伊藤さんには、オンボーディングというものがどのように見えていらっしゃいますか。
伊藤 オンボーディングの定義は、企業によってまちまちです。採用されて配属先が決まるまでの研修のことなのか、その企業の文化をインストールするまでのことなのか、または退職するまでずっと続けられるものなのか……。様々な解釈があり、どれも意味的には間違いではないと思います。
現在のクラウドワークスでは、入社して一週間で人事部門が行う研修をそう呼んでおり、カルチャーフィットは事業部任せということになっています。ただし、一度事業部に配属されると人事から様子がまったく見えなくなるので、そこを大きく変えることにしました。「一人ひとり会社として最後まで向き合うこと」をゴールとして、今、変革プランを描いているところです。
岡本 いきなり大きな改革プランに着手されたのですね。
伊藤 内容としては1ヵ月に1回、サーベイを行い、そのエンゲージメント指数が低い人、急に低下した人に対して、人事の方から声を掛けることを考えています。直接の上長に相談できない人でも、ちょっと離れた畑違いの私になら話せるという環境を作り、必要と思われたことは、毎週の経営会議に議題に挙げて、対応する流れを作ろうとしています。
人材の情報は縦割りとなりがちですが、ある部署ではあまり評価されていなくても、別部署では能力が発揮できることもあります。そうした人材の流動化を促進することで、それぞれの部署のお作法やしきたりを崩壊し、さらには横展開することで組織の活性化が図られるのではないかと期待しています。
なお私の入社にあたっては、「会社を30%成長させる」ために「30%成長させられる人事組織をつくること」が求められています。経営側は「その組織、環境を使って30%成長させていく」というように、役割分担が明確なので、ハレーションが起きようがないというか、責任の問題でお互いに尊重し合うことが前提になっています。