パーソルキャリアは、オフィスワークとテレワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」に関する意識のギャップを調査し、その結果を発表した。なお同社は、ビジネスパーソンと企業間の“転職や仕事に対する意識の差”などをはじめとした実情を明らかにする「doda ビジネスパーソンと企業のギャップ調査」を継続的に発表していくとし、今回の調査結果を第1回とする。
調査の概要と結果は以下のとおり。
個人、企業ともに8割以上が「ハイブリッドワーク」を導入済み、または導入意向・希望あり
企業へ「ハイブリッドワーク」の実施状況について尋ねたところ、「すでに導入している」「導入予定である」と回答した企業は計56.5%となり、「導入意向がある(23.5%)」も含めると計80.0%に上った。個人は、「すでに導入している」「導入予定である」が計43.6%、「導入してほしいと思う」が39.2%となり、計82.8%という高い割合で「ハイブリッドワーク」を実施済みまたは希望があることが明らかになったという。(【図2】参照)コロナ前まではなかった「ハイブリッドワーク」という働き方が、コロナ禍3年目を迎えて個人・企業に定着してきている表れだと同社は述べている。
個人/企業ともに、半数以上が「ハイブリッドワーク」導入が勤続意向の上昇につながると回答 一方、「導入中止」で勤続意向が低下すると考える企業は47.0%、個人は27.1%で約20ポイントのギャップ
「ハイブリッドワーク」未導入の個人と企業へ、「ハイブリッドワーク」導入が勤続意向の変化にどのように作用すると考えるかを尋ねたところ、「勤続意向が上昇する」と回答した個人は計61.9%に。「従業員の勤続意向は上昇する」と回答した企業は計50.4%とそれぞれ半数以上が勤続意向の上昇につながると回答した。(【図3】参照)
同時に、「ハイブリッドワーク」導入済みの個人・企業の両者に、ハイブリッドワークを中止することによる影響について聞いたところ、企業の計47.0%が「従業員の勤続意向は低下する」と回答。一方で、個人では「勤続意向が低下する」と回答した人は計27.1%にとどまり、約20ポイント以上の差が出る結果となった。(【図4】参照)
個人側は、「ハイブリッドワーク」を新たに活用できることは、働き方の選択肢が広がるとポジティブに受け止めている一方で、既に実施している「ハイブリッドワーク」が中止となった場合も、退職を考えるまでの影響はなく、会社に求める大きな条件とまでは至っていないことがうかがえるという。また、企業の方が総じて、従業員の「ハイブリッドワーク」へのニーズが高いと考え、重要視していることが分かったと同社は述べている。
求人への応募時に「ハイブリッドワーク」の有無を重視する個人は約7割
勤続意向に加えて、「ハイブリッドワーク」の有無が転職時の「応募基準」にどの程度関係するかを尋ねたところ、個人は全体で計68.0%が「重要視する」と回答。企業も計68.5%が「影響する」と高い割合を示し、応募動機へも影響があると捉えていることが分かった。(【図5】【図6】参照)
企業は“自律自走する力”を重視しているが、個人との差が大きく最大20ポイント差
ハイブリッドワークの働き方をする上で強みとなると考えるスキル、または従業員に持っていてほしいスキルについて個人・企業へ尋ねたところ、個人は「対面/オンライン問わないコミュニケーション能力(48.0%)」に最も多く回答が集まり、以降「ITスキル(45.6%)」、「臨機応変さ(42.8%)」「タイムマネジメント能力(38.4%)」と続いた。一方、企業が従業員に持っていてほしいスキルは、「臨機応変さ(59.5%)」が最も多く、次いで、「対面/オンライン問わないコミュニケーション能力(57.0%)」、「課題解決力(52.5%)」「主体的思考力(50.0%)」となった。
企業が求めるスキル上位4位のうち「対面/オンライン問わないコミュニケーション能力」を除く「主体的思考力」「臨機応変さ」「課題解決力」は、企業の過半数以上が強みになると回答しているが、個人の回答は企業と比べ最大20ポイントの差が表れる結果となった。(【図7】参照)
また、個人の転職検討/興味者と転職経験者の間で必要と感じるスキルにも差が見られた。転職経験者の方が「課題解決力」や「主体的思考力」が重要だと回答する割合が高く、企業側の需要と近い考え方を持っている傾向がうかがえる。(【図8】参照)
個人は自分でコントロールできる時間、企業はデジタル化促進など組織変革がメリットに 一方で、個人・企業ともにコミュニケーションの不足をデメリットと考えている
個人の中でハイブリッドワークを実施したことがある人に、ハイブリッドワークのメリット・デメリットを尋ねたところ、メリットについては「通勤時間の節約(56.8%)」、「個人時間の増加(47.3%)」が上位となり、自身でコントロールできる“時間“を大切にできる働き方を求める傾向が見てとれたという。転職経験者においては特にその傾向が強く、「通勤時間の節約(65.7%)」、「個人時間の増加(60.0%)」と共に6割以上がメリットと考えていることが分かった。(【図9】参照)
デメリットは「コミュニケーション不足(62.2%)」が最も多く、次に「時間管理の難しさ(31.1%)」となった。転職経験者においても「コミュニケーション不足(57.1%)」に最も多くの回答が集まるという結果になった。(【図10】参照)
また企業が感じるメリットに目を向けてみると、「全社的にデジタル化が促進された(61.7%)」が最も多く、それ以降も組織の変革につながる項目が上位にランクインしている。(【図11】参照)
デメリットに関しては個人と変わらず「コミュニケーションの不足(53.1%)」が最も多く、次いで「部下のマネジメントのしづらさ(44.4%)」となった。コミュニケーション面に関する課題を感じていることがうかがえるという。(【図12】参照)
個人の半数以上が自宅を選び、メインオフィスの2倍以上という結果に しかし、個人・企業ともに、「自宅」と「メインオフィス」がその他の就業場所を大きく引き離し、「メインオフィス」での就業ニーズは変わらない
個人と企業に、業務効率が上がると考える就業場所を尋ねたところ、個人は、「自宅(58.4%)」が最も多くなった。次の「メインオフィス(25.6%)」との差は約2倍と大きく、ハイブリッドワークの中心に在宅ワークが浸透していることがうかがえるという。(【図13】参照)
一方で、従業員の業務効率が上がると考えられ、業務を行ってほしい就業場所を企業へ尋ねたところ、個人の回答と同様に1位が「自宅(51.0%)」次いで「メインオフィス(41.0%)」という並びになった。個人の回答と比較すると、「メインオフィス」と「自宅」の回答割合の差は、企業は10ポイントにとどまったが、個人・企業ともに、両就業場所はその他を大きく引き離していることが分かる。「テレワーク」が一定程度浸透した後も、就業場所としての「メインオフィス」へのニーズや重要性は変わらないということがみてとれるという。
個人は、業務効率向上につながる「個室ブース」のような設備とあわせて、マッサージ室やフィットネスジムなど“リラックス・リフレッシュできる”設備も求めている
最後に、どのような設備があればオフィスで働く価値が向上するかを個人へ、企業へは、従業員の業務効率向上のために完備している設備を尋ねた。個人では「個室ブース(個人:43.2%、企業:34.0%)」が、企業では「プロジェクターやホワイトボートが完備された会議室(企業:38.0%、個人:18.4%)」が最上位となった。個人と企業の回答に差が出た設備には「マッサージ室(個人:22.8%、企業:10.5%)」や「フィットネスジム(個人:21.6%、企業:11.5%)」などがあり、個人側で一定のニーズがあることが分かった。(【図14】参照)
この結果から、自身でコントロールできる時間を大切にする働き方を求める個人にとっては、出社が当たり前であった従来と比べると、リラックスやリフレッシュできる場所としての役割をオフィスへ求めていることがうかがえるとしている。
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