パーソル総合研究所は、「企業理念と人事制度の浸透に関する定量調査」の結果を発表した。同調査は、企業理念と人事制度に関する社内コミュニケーションや浸透施策を「組織」「情報」「プロセス」「人」「媒体」の5次元に分けて定量的な検証を行い、浸透の効果やその要因、課題を明らかにすることを目的に実施された。
業績の悪い企業のほうが理念・制度の浸透度が低い
企業理念について、「内容を十分理解している」は41.8%、「内容について同意できる」は44.5%という結果になった。人事制度は、「内容を十分に理解している」は36.1%、「内容について同意できる」は33.8%と理念と比べると浸透度はやや低いことが分かる。
また、企業の業績別にみたところ、業績の悪い企業のほうが、理念・制度ともに浸透度が低いことが分かった。
企業理念の浸透と、個人のパフォーマンス、就業継続意向、ワーク・エンゲイジメントにはプラスの関係が見られた。
企業理念・人事制度の浸透要因の分析
- 組織次元・情報次元
理念・制度へのネガティブな印象をみると、「内容が綺麗ごとばかりだ」などの綺麗ごと感が強く感じられていることが分かる。「現場の現実がかみ合っていない」などの現場との一貫性欠如も高めとなり、全体的に理念よりも制度のほうが印象が悪い結果となった。
理念・制度の浸透には、「明確さ」「詳細さ」がともにプラスの影響を与えていることが分かった。また、理念は「課題の直視」や「脱・綺麗ごと」などが浸透につながっている。制度は、「ビジュアル性」「現場でのリアリティ」などが浸透に影響しているようだ。
- プロセス次元
理念・制度の浸透には、策定・浸透プロセスにおける従業員のインボルブメント(関与・参画・共感の実感)の度合いが大きくプラスの関係にある。対話機会、意見の吸い上げ、プロセスの透明性がインボルブメントを上昇させる傾向が見られた。
- 人次元
理念は、施策に「課長・リーダー」「従業員の家族」が登場している場合、理念浸透にプラスの影響が見られる。人事制度は、「メンバー層の従業員」の登場も浸透プロセスにプラスの影響を与えている。社長、会長、CEOといった組織トップは浸透にプラスの影響は確認されなかった。
また、理念・制度の策定・浸透プロセスにおける「対話機会」「意見の吸い上げ」「プロセスの透明性」が高いと、うわさ行動のポジティブさが上昇している傾向がみられた。
- 媒体次元
理念・制度ともに、全体説明会、社内イントラ、社内報などの「一方通行型」のコミュニケーション施策が突出して多いことが分かる。
理念・制度ともに、ロールプレイを含む研修やワークショップなどの双方型のメディアやイベントが共通してプラスの影響を与えている。また、理念は目標やアワードなどへ反映する評価反映型、制度はアンケートや相談窓口などの吸い上げ型の媒体がプラスに関連していることが分かった。
同調査の概要は次図のとおり。調査結果の詳細はパーソル総合研究所のHPより確認できる。
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