新人はまず「受容感」、その後に「有能感」を感じて定着していく
ある調査によると、社会人の退職理由のホンネランキング上位に挙がるのは、「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」「同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった」というものです。その他にも「社長がワンマンだった」「社風が合わなかった」なども比較的上位に挙がっており、これらはすべてそこで働く人たちとの相性の問題に帰結します。
つまり、「こんな人たちとはいっしょに働けない!」という理由で、多くの人が退職を決めているということです。
私自身、さまざまな企業から依頼を受けて、入社早々辞めてしまった早期離職者や、異動早々退職してしまった方々の本当の退職理由を調査しています。その中で、どなたも初めのうちは「やはりやりたい仕事じゃなかった」「プライベートの都合上で」などの理由を口にされますが、本人の本音を深掘っていったり、所属するチームメンバーなどへの聞き取り調査を進めていったりすると、「実は、あの上司が嫌だった」「同僚のアイツとどうしてもウマが合わない」などが退職の決め手であることが多いものです。
仕事内容自体は本人の希望にとてもマッチしており、適性もあるにもかかわらず、このような人間関係によりその会社でのキャリアを絶たれてしまうのは、会社にとっても、もちろん本人にとっても残念なことです。
実際のところ、職場の人間関係は社員定着にどれほど重要なのでしょうか——実は職場の人間関係づくりこそ、社員定着の第一歩なのです。
人間関係をつくることができれば、新人(ジョブローテーションで部署異動した人なども含まれます)は、職場の仲間に受け入れられた感覚である「受容感」を得られます。さらに、周囲の人から情報を得て、次第に仕事ができるようになってきた感覚である「有能感」も得られるようになります。
有能感まで得られた社員は、職場に定着します。結局、身近な周囲との関係づくりが始めに必要というわけです。「ある人にとって“組織”とはその人の半径3メートルにいる身近な人たちのこと」とよくいわれますが、会社に対する一体感や愛着とは結局、その人の上司や同僚など身近な人に対する一体感や愛着と同義なのかもしれません。
なお、受容感を得るには大体3ヵ月ほどかかり、有能感を得るまでになるには大体6ヵ月ほどかかることが研究で明らかになっています。