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コロナ後の従業員エンゲージメント、リモートワークを減らし過ぎると低下―アジャイルHR調べ

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 アジャイルHRは、「A&Iエンゲージメント標準調査」を実施し、その結果を発表した。

 前回の全国調査は2023年1月31日から2月6日にかけて実施。その時期は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行した2023年5月以前のコロナ禍終盤期であった。今回の調査は5類移行後10ヵ月目の2024年2月5日から2月9日に実施。前回と今回の違いを分析することによって、コロナ後の従業員エンゲージメントの変化が分かるという。

日本の従業員エンゲージメントが低い理由

会社への帰属意識が低い

 従業員エンゲージメントは、以下の2つの概念を含んだ個人の心理状態を指す。

  • ワークエンゲージメント:仕事を通じて得られるポジティブな心理状態
  • 組織コミットメント:所属する会社や組織への帰属意識や愛着心

 同調査では4件法を採用しているため(4:そうだ、3:ややそうだ、2:ややちがう、1:ちがう)、肯定的回答と否定的回答の中間のスコアは2.5となるが、回答者全員の平均値は以下のようになった。

  • 従業員エンゲージメント:2.59
  • ワークエンゲージメント:2.68
  • 組織コミットメント:2.49

 従業員エンゲージメントは、ワークエンゲージメントと組織コミットメントの平均値となる。ワークエンゲージメントの値は中間スコア(2.5)を0.18上回っているが、組織コミットメントの値は中間スコアを下回っており、従業員エンゲージメントを引き下げる方向に作用していることが分かる。会社への帰属意識が高かったかつての日本企業のイメージとは異なり、組織コミットメントがマイナス要因となっている。

 以下では、日本の従業員エンゲージメントを低下させているセグメントを探る(一部抜粋)。

年代:組織コミットメントが希薄な40歳代と50歳代

 40歳代と50歳代の組織コミットメントの低さが目立っており、20歳代から30歳代、40歳代と年を重ねるにつれて、会社への愛着は低下している。一方で、60歳代以上の従業員エンゲージメントはすべての年代の中で最も高かった。シニア層のモチベーションを懸念する声がしばしば聞かれるが、60歳代以上に関しては、元気に働くシニアの姿がイメージされる。

図表1
[画像クリックで拡大表示]
従業員規模:50人の壁が存在?

 50人未満の小規模会社の従業員エンゲージメントが最も高い値を示しているが、50~99人になると低下している。とくに50~99人の組織コミットメントの低下幅が大きく、100人を超えて人数が増えるにつれ、緩やかに上昇していく傾向がみられる。50人を超えた会社では、マネジャーの量的・質的不足が共通の課題となる(いわゆる「50人の壁」)といわれるが、その影響による可能性が推測される。

図表2
[画像クリックで拡大表示]

コロナ後の従業員エンゲージメントの変化

 昨年の調査結果と比較して、従業員エンゲージメントには若干の上昇がみられる。同調査では、合計25の小分類項目を測定しているが、前回よりもスコアを下げている項目はみられなかった。スコアの上昇に対して、特に影響したと考えられる要因は以下のとおり(一部抜粋)。

年代:20歳代以下の継続勤務意欲は低下

 年代別の変化で特に気になるのは、20歳代以下の継続勤務意欲の低下である。他の年代のスコアはすべて上昇しているが、20歳代以下のみ顕著な低下がみられる。コロナ禍を経て、今の会社で働き続けることに対する20歳代以下の意識が大きく変化していると考えられる。

図表3
[画像クリックで拡大表示]
リモートワークを減らし過ぎると従業員エンゲージメントは低下

 コロナ後、リモートワーク中心から出社中心に切り替えた会社が少なくなかったため、その影響を分析した。リモートワークの実施頻度が「コロナ禍と変わらない」と回答した人は69.9%だったが、その層のワークエンゲージメント(2.67)と組織コミットメント(2.49)は、今回調査の全体平均とほぼ同水準だった。つまり、リモートワークの実施頻度がコロナ禍と同じでも、従業員エンゲージメントは上昇したことが分かる。

 ただし、リモートワークの実施頻度が「コロナ禍よりも増えた」「コロナ禍よりもやや増えた」と回答した層の従業員エンゲージメントは全体平均よりも高くなっている。「コロナ禍よりやや減った」と回答した層の従業員エンゲージメントは全体平均よりも若干高い一方で、「コロナ禍よりも減った」と回答した層は全体平均よりも低いという結果がみられる。オフィス出社を少し増やすことは従業員エンゲージメントにプラスに働くものの、大幅に増やすことはマイナスに作用していることが分かった。

図表4
[画像クリックで拡大表示]
仕事の生産性が向上した層の従業員エンゲージメントは高い

 コロナ後における仕事の生産性の変化と従業員エンゲージメントの関係を分析した。仕事の生産性が「コロナ禍と変わらない」と回答した人は72.5%だったが、その層のワークエンゲージメント(2.68)と組織コミットメント(2.49)は、今回調査の全体平均とほぼ同水準だった。つまり、仕事の生産性がコロナ禍と同じでも、従業員エンゲージメントは上昇したことが分かる。

 ただし、仕事の生産性が「コロナ禍よりも上った」「コロナ禍よりもやや上った」と回答した層の従業員エンゲージメントは、全体平均よりも顕著に高くなっている。逆に、「コロナ禍よりもやや下がった」「コロナ禍よりも下がった」と回答した層は、全体平均よりも顕著に低くなった。働き方改革やDXなどによって仕事の生産性を高められる会社ほど、従業員エンゲージメントを向上できる可能性があると考えられる。

図表5
[画像クリックで拡大表示]

 調査レポートは、A&Iエンゲージメント標準調査のWebサイトからダウンロードできる。

 なお、同調査の概要は次のとおり。

  • 調査期間:2024年2月5~9日
  • 調査手法:インターネット調査
  • 調査対象:全国の10~60代の男女:1万106人(インテージ マイティモニター登録者)

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