人材・組織の多様性拡大に向けて思い切った施策を実行中
——Vision2030で策定された3つの施策を実現するため、御社ではこれまでにない人材開発・人材育成における改革を進めていらっしゃいます。なぜいま改革を推進しているのか。理由をお聞かせください。
世界的な脱炭素の潮流、日本の「2050年カーボンネットゼロ」宣言に表されるように、今後も輸送用燃料の脱炭素化は進み、石油の需要は漸減すると想定されています。「Vision2030」では、「Oil」つまり石油事業の競争力の強化を図り収益力を高めます。同時に将来の成長ドライバーとなる「New」の事業、すなわち次世代・低炭素事業に投資し育てていきます。変化の激しい時代だからこそ柔軟に対応し、足元から未来に続くトランジションを推進できるよう、中長期的な目線で企業価値の最大化を図るロードマップを考えています。このような事業の変革期において、新たな事業領域へのチャレンジと、既存事業領域の変革を実現する、自律的で多様な思考を持ち挑戦し続ける人材集団を形成すること。これが当社の進める「HRX」です。
——こうした新たな取り組みを推進するにあたり、特にイノベーションに向けた教育、環境・組織づくりが重要かと想像します。この点への取り組みを教えてください。
石油開発・精製・販売で培った研究力・技術力は、私たちの大きな財産です。この大きな財産に加え、新たな知見やスキル、多様な思考や変革意欲によって、Vision2030を実現する人材集団を形成するため、さまざまな取り組みを進めています。
変革を起こすためには人材の多様化が不可欠で、当社にない思考や価値観、専門性やスキル、仕事の仕方などを取り入れるため、キャリア採用を積極的に行っています。昨年は、人事や総務、ITなどの基幹部門で約30名、製油所などの現場で約50名の新卒採用に加え、約70名をキャリア採用しました。職場の“景色”が大きく変わりつつあることを実感しています。
多様性の推進においては女性の活躍も必要で、大卒・大学院卒の新卒採用の女性比率を50%以上とするほか、管理職やポストへの登用も積極的に行っています。
——キャリア採用を推進されていることですが、これまでキャリア採用がまれだったとすると、スムーズにいかない部分もあるのではないでしょうか。
当社はこれまでも、世代間での社員数のバラツキを補完するためにキャリア採用を行ってきました。ただし、全体からするとキャリア採用社員は少数派であり、組織になじむまでに時間がかかるケースが多かったように思います。ただ直近では、専門性を要する部門や新規事業部門などを中心にキャリア採用社員が増え、入社後即活躍していただいています。
キャリア採用の社員に対しては、当社への理解を深めるための研修や、キャリア採用社員同士のネットワークを築く交流の場を設けるなど、入社後のフォローアップも随時行っています。