社員を巻き込み、やれることは何でもやり切る
——いまでは御社の求人には年間700名にも上る応募があるそうですが、どのような施策を実施されてきたのですか。
まずは候補者がどんな方たちなのか、どういったキャリア課題を抱えていて、それに対して私たちが何を提供できるのかをすり合わせていかないといけないと考えました。そのために、求職者と会う機会をできる限り増やそうと思い、さまざまなチャネルでアプローチしていきました。
具体的には、停滞気味だったWantedlyを活性化したり、X(旧Twitter)経由で「ランチをご馳走するので転職経験のあるデザイナーの方お会いしたいです!」と発信したり、気になった方に個別でDM(ダイレクトメッセージ)したりしました。他には、転職エージェントの新規開拓や、社員の協力のもとでのリファラルの声かけ、現場のメンバーによるYOUTRUSTでのスカウト送信などを実施していました。
2年目からは、同職種交流会やLT(ライトニングトーク)会などのカジュアルなイベントも開催しました。当時はコロナ禍が明けたころで、どこもオンライン開催が主体でしたが、当社はあえてオフラインで実施することにしました。「ビジネスの課題を解決する会社」だとまだ認知されていない段階だったので、自分たちが何を考えているのかをリアルに肌で伝えていきたいと思ったからです。
現在は、全社でnoteでの発信を行っています。こちらに関してはPRチームがリードし、代表から事業部のメンバーまで巻き込んで推進してくれています。具体的には「noteリレー」と題し、まず執筆する順番を決め、次に執筆する社員に「あなたにはこういうお題で書いてほしい」とバトンを渡していくスタイルで進めています。noteのネタに困っているメンバーに好評なので、今後も継続していきたいと思っています。
本当に「やれることは何でもやろう」「当社との相性が良さそうな媒体は全部トライしてみよう」といった感じです。もちろん、ダイレクトリクルーティングのスカウトも積極的に打っていきました。
——御社の社員の方は採用活動に積極的だと聞いています。それはなぜなのでしょうか。
当社では、自分たちの事業成長のためには、仕事に対する熱量が高く優秀な人材が不可欠、という考えを社員全員が持っています。そのため、メンバー全員が採用活動を自分事化して、関心を持っています。「この人はどうですか」という声が、次々と私のところに寄せられてきます。実は、ボードメンバーもリファラルで入社しています。メンバーたちはそうした事例を見ているので、自ずと力を注いでくれており、「この人はどうですか」という声が増えていますね。
——Wantedlyで月間200本ものスカウトメールを打っていらっしゃると聞きました。どうしたらそれだけの数を打てるのでしょうか。工夫されている点も教えてください。
私1人でスカウトメールを打っているわけではありません。スカウトメールの作成に協力してくれそうな現場のメンバーといっしょに進めています。現在は、事業部のメンバーと組織開発のメンバーを含めた複数名での体制を構築しています。
スカウトメールの作成にあたって配慮しているのは、1通1通しっかりと自社の想いを伝えることです。そこはどんなに時間をかけてでも、こだわっています。正直に言って、キラーワードはいまも見つかっていません。ないと言ってよいでしょう。とにかく毎回仮説を立てたうえで、スカウトメールを書くようにしています。
もう1つ配慮しているのは、スカウト対象者の基準をすり合わせることです。これは最初、けっこう難しかったです。私は日ごろからスカウトメールを打ち続けているので、「この方のキャリアなら当社にフィットする」と分かるようになっていましたが、他のメンバーはなかなか確信を持てなかったりします。そこでスカウトメンバーには、100枚ものレジュメを代表のもとに持っていき、代表にすべて目を通してもらって「この人はフィットするかどうか」を聞くという、100本ノックを経験してもらいました。これは効果がありましたね。
——振り返って、年間700名にまで応募数が増えた要因は何だと思いますか。
当たり前のことを徹底できていることではないでしょうか。それこそ、決めた数のスカウトメールを送り切る、毎週新たな求人をアップし見てもらう数を増やす、SNSもしっかりと発信する……やると決めたことをやり切る姿勢が欠かせません。当たり前のことを高い水準で徹底する、凡事徹底に尽きますね。